ENECHANGE「電力需要のコントロールに商機」=城口洋平CEOに聞く

株式

2021/10/19 9:00

 ENECHANGE<4169.T>はプラットフォーム事業、データ事業を展開し、現在はプラットフォーム事業を中心に高成長を続けている。さらに、2022年に予定される電気事業法改正による電力データの自由化や、デマンドレスポンス(電力の需給バランスを調整するための仕組み)の必要性の高まりが、データ事業の飛躍につながっていく公算が大きい。同社の現状と今後について城口洋平CEO(最高経営責任者)に聞いた。

――現在の主力のプラットフォーム事業はいかがですか。

 「当社は日本最大の家庭向け電力・ガス切替プラットフォーム『エネチェンジ』、法人向けの『エネチェンジBiz』を運営しています。電気料金を安くしたいというだけでなく、クリーンな電力を使いたいというニーズもあり、利用は拡大中です。ユーザーが『エネチェンジ』で切り替えを実施した際の一時報酬に加えて、電力会社、ガス会社に対して支払う毎月の料金にあらかじめ定められた科率を乗じた金額をいただくというストック型のビジネスモデルです。オンライン切替プラットフォームとしてナンバーワンのポジションを築いており、電力会社が『エネチェンジ』上でいろいろなキャッシュバックキャンペーンを実施するなど、ユーザーにとってのメリットも大きくなっています。現状では積極的な広告宣伝は行っておりませんが、今後、広告宣伝を強化することでより一層の成長が期待できると考えています」

<制度改革を見据えて準備進める>

 ――電力データの自由化が御社の事業にどう影響するか教えてください。

 「現在、電力データは電力会社しか使えませんが、22年春にはAPIアクセスが第三者(電力小売事業者以外)に開放され、だれでも使えるようになる予定です。電力データが使えるようになると、電力の利用状況が見える化され、それを基に需要のコントロールが可能になって、より効率的に電力を使えるようになります。例えば、エアコンや冷蔵庫など家電の制御による省エネ支援のほか、流通・飲食業、運輸業、銀行業、医療・介護業など、幅広い分野で活用できるでしょう。今後、太陽光、風力といった再生可能エネルギーの普及が見込まれますが、これらは発電量が変動するため、電力データを活用した需要側のコントロールは世の中に必要不可欠になります」

 ――EV(電気自動車)についてはどう考えていますか。

 「世界ではEV充電が大きな脚光を浴びています。21年には欧米のエネルギーテック企業の上場が増えていますが、その多くはEV充電事業を手掛けています。それらの企業は時価総額数千億円規模で評価をされていますが、なぜそこまで評価されるのかというと、EV充電ステーションに搭載される蓄電池を使ったデマンドレスポンスへの活用が期待されているからです。こうした将来を視野に入れ、当社は米EV充電機器大手と提携し、日本におけるEV向け蓄電池搭載型急速充電器の販売と、関連ソフトウエアサービスの提供を開始しました。当社は日本のEV充電ステーションの拡大に貢献するとともに、デマンドレスポンス機能としての利用を推進します」

 ――データ事業の展望はいかがですか。

 「現在はEMAP(エネルギーマーケティング)、SMAP(スマートメーターデータ解析)を中心に展開し、顧客数、売上ともに順調に伸びています。日本の電力業界は海外より3-5年遅れていますが、今は制度改革の過渡期にあり、当社は先行投資を行っている状況です。今後、22年に電力データが自由化され、24年には容量市場(将来の供給力を取引する市場)、需給調整市場(電力の需要と供給を一致させるため必要な市場)という新しい市場ができる予定です。それに加えて、EVの普及が加速すれば、当社のデータ事業は大きな飛躍が期待できます。順調にいけば、3年後あたりから収益に大きな変化が表れるのではないかと考えています。スピード感を持って対応を進め、日本で圧倒的なナンバーワンを目指します」

 ――将来の目標数値はありますか。

 「世界的な脱炭素化の推進により、当社の事業は今後、さらに重要性を増していくでしょう。その中で、プラットフォーム事業に加えて、データ事業が本格的に成長することにより、まずは27年までに全体の売上高100億円(21年12月期26億円予想)を目標としています。業績が非常に好調に推移していることから、できれば1年でも2年でも早く前倒しで達成し、さらにその先の成長に挑戦したいと思っています」

提供:モーニングスター社

関連記事

マーケット情報

▲ページTOPへ