海外株式見通し=米国、香港

【米国株】新型コロナ薬・ワクチンの開発相次ぎ進ちょく

 製薬大手ファイザー<PFE>が11月5日、開発中の新型コロナウイルス向け飲み薬「パクスロビド」の投与により入院や死亡のリスクを約9割減らせたとの治験データを公表した。「圧倒的な効果」が示されたことから臨床試験での新規患者受入れを停止し、緊急使用許可を得るため米食品医薬品局(FDA)に今月中にもデータを提出する計画だ。

 メルク<MRK>も先月、新型コロナ経口薬「モルヌピラル」の緊急使用許可をFDAに申請。9月に大規模治験を開始して入院・死亡リスクを半減させる中間結果を得たと10月5日までに発表。ファイザーが9月28日に大規模治験を開始したと報じられていたことから、順調ならば11月上旬に治験結果が公表される可能性が高かったといえよう。

 米国は、11月8日から外国籍者の入国について、新型コロナワクチン接種を義務化するとともに接種完了を条件として渡航制限を解除。また、バイデン政権は従業員100人以上の企業を対象にした新型コロナワクチン接種の義務化を来年1月から導入すると発表。対象は全米で8400万人に上る。

 ジョンソン&ジョンソン<JNJ>製の新型コロナワクチンは、米国立衛生研究所(NIH)のFDAに提出された治験データによれば、特にファイザー製やモデルナ<MRNA>製に対する混合接種が有効だったことが示された。その意味では、今後はジョンソン&ジョンソンの新型コロナワクチンに占める重要度が増していくものと期待される。

 5年間で約5500億ドルの新規支出を含む1兆ドル規模の超党派インフラ投資法案が11月5日の米下院で可決。道路や橋りょう、鉄道網の補修や強化に加えて、EV(電気自動車)の充電所の整備が盛り込まれている。鉄鋼株をはじめ、建設機械、水処理、EVのネットワーク網運営、建設資材など幅広い業界への恩恵が見込まれる。

【香港株】三一重工は「一帯一路」政策を追い風に躍進

 米下院で11月5日、1兆ドル規模のインフラ投資法案が可決し、道路や橋、空港、港などの大規模改修に資金が投じられる見通しとなった。また、インドでも8月にモディ首相が1.35兆ドル規模の国家インフラ計画を打ち出す動きが見られた。大手建機メーカーへの恩恵となるだろう。

 上海市場銘柄で、建設機械で中国最大手、コンクリートポンプ車で世界最大手の三一重工(SANY、600031)は、建機業界で米キャタピラー<CAT>と日本のコマツ(6301)に次ぐ世界3位に成長した。

 今年1月から中国政府により実施された不動産業界向け融資規制の影響、4~5月にかけての建機業界の稼働率の抑制、さらには最近の中国恒大集団を含む不動産開発企業の先行き不透明感が影響するのではないかとの懸念から、同社の株価は2月以降、調整局面が続いている。それでも、時価総額では昨年8月にコマツを抜いて以降、世界2位の座をキープしている。

 人口約2億7000万人を擁するインドネシアで、日中の建設機械大手の争いが激しくなっている。中国市場の伸びが鈍化する中、三一重工は新たな収益源を求めて海外展開を加速している。インドネシアはコマツや日立建機(6305)といった日本勢の牙城が揺るがなかった中、今年に入って三一重工は日本企業よりも約2割安いとされる価格競争力、および中国政府による広域経済圏構想「一帯一路」と連携した販売力を武器に、市場シェアで日本勢を追い抜いた。

 コマツはデジタルの活用や手厚いサポートで対抗するものの、タイでも約5割のシェアとされるコマツを三一重工が追い掛けている。今までは中南米を含めて新興国市場を中心に開拓してきたが、2025年に向けて北米や欧州など先進国の攻略にも着手する方針だ。

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(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)

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