<新興国eye>カンボジア政府、EVの普及振興を行う方針

新興国

2021/11/26 12:02

 11月4日、カンボジア公共事業運輸省のスン・チャントル大臣は、カンボジア政府として、今後電気自動車(EV)の普及振興を行っていきたいと述べました。カンボジア電力公社のケオ・ラタナック総裁や駐カンボジアの英国大使、オーストラリア大使等が参加した「クリーンなカンボジア向けた自動車の電動化」に関するパネル討議での発言です。

 同大臣によりますと、カンボジアのおける自動車(乗用車・トラックなど)の登録台数は100万台に迫っていますが、EVの登録台数は42台しかないとのことです。

 今後の普及振興に関しては、クリーンエネルギーの使用に対する国民の理解促進、バッテリーのリサイクル体制の確立、充電ステーションの拡充、政府による関税優遇措置、などが重要であると指摘しました。

 関税優遇措置については、関税については普通の自動車が122%のところ、EVは63%に、特別税については、通常50%のところEVは10%に優遇する方向で、経済財政省と検討中であるとしています。

 カンボジアの電力事情(石炭発電が約半分を占める)やインフラ不足(充電ステーション未設置等)を考えると、すぐにEVが普及する状況にはないものと見られます。

 しかし、既存の自動車台数が多くないことから、条件が整えば一気に電動化が広がる可能性もあります。プノンペンでもトヨタ<7203.T>のプリウスなどのハイブリッド車の数は相当に増えているものと見られます。中国のBYDのEVも見かけます。

 自動車等の運輸がカンボジアのエネルギー使用に占める割合は45%とのことであり、EVの普及は石炭火力発電の抑制と共に、温暖化ガス減少には大きな役割を果たすものと見られます。カンボジア政府の様々な努力が期待されます。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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提供:モーニングスター社

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