<新興国eye>カンボジア中銀、金融政策委員会を開催

新興国

2021/12/3 12:13

 11月16日、カンボジアの中央銀行であるカンボジア国立銀行(NBC)の金融政策委員会が開催されました。カンボジアの金融政策委員会は、日銀の政策委員会とは異なり外部委員はおらず、カンボジア国立銀行総裁が議長となり、副総裁等の銀行職員が委員となっています。委員会は原則として四半期に一度開催され、最新の経済状況分析を基に、金融政策を決定します。

 今回の委員会では、為替レートの安定性を継続的に維持するため必要に応じて為替市場に介入する、証券担保型流動性供給オペレーション(LPCO)の入札金利の安定を図るとともに限界貸付ファシリティ(MLF)を通じて適切な流動性供給を行う、LPCOを通じて金融機関のリエル需要に適合する流動性供給を行う、預金準備率はリエル・外貨ともに7%を維持する、MLF利用促進のために周知を図るなどの政策方針が決定されました。

 このうち為替市場への介入については、米国の金利上昇によるドル高傾向の中で、リエルの対ドルレートの安定化を図るために9月以降すでに実施されているものです。また、MLFは、21年9月に導入されたもので、金融機関から差入れられた担保の範囲内で翌営業日を返済期限とする貸付けです。日銀の補完貸付制度やECB(欧州中央銀行)の限界貸付ファシリティと同様の制度です。カンボジアではコール市場が全く発展していないため、中央銀行がこうした制度を導入したことは評価されます。

 新型コロナが収束しつつある中で、米国の金融緩和の出口政策によってドル高が見込まれています。国内では、新型コロナで返済が困難となった貸付の条件緩和を行ってきましたが、いつまでも続けるわけにはいかず、終了した際の不良債権比率の上昇も懸念されます。こうした状況変化に適時適切に対応することは、中央銀行の大きな役割です。今後も的確な経済分析を基に機動的な金融政策を決定していくことが期待されます。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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提供:モーニングスター社

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