QDレーザ・菅原充社長に聞く:半導体レーザーの幅広い事業を展開

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2021/12/21 9:00

 QDレーザ(6613・M)は独自の半導体レーザー技術をコアに、レーザデバイス(LD)事業、レーザアイウェア(LEW)事業を手掛ける。半導体レーザーは光通信、ディスプレイ、バイオセンサー、自動運転レーダーなど多彩な用途があって世界的にニーズが大きく、将来は巨大な市場が生まれる観測だ。同社は関連製品の開発、市場開拓に努めており、長期的に大きな成長が期待できる。同社の現状と今後について菅原充社長に聞いた。

シリコンフォトニクスは爆発的拡大へ

 ――御社の事業内容を教えてください。

 「当社は半導体レーザー業界唯一のファブレス(工場を持たない)メーカーです。半導体レーザーの用途には光通信のほか、加工、センシング、ディスプレイの領域があり、当社はそれぞれの分野で事業を展開しています。『通信』用の量子ドットレーザーは、パソコンやデータセンターの内部まで、光による情報の伝達、処理を可能にするシリコンフォトニクスの主要部品です。『加工』ではスマートフォンの回路基板や半導体の加工装置に採用されています。『センシング』では血液中の血小板や白血球を測るフローサイトメーターなどのバイオ検査装置に使われています。さらに、『ディスプレイ』では弱視者の見えづらいを『見える』に変えるものとして、メガネ型フレームに内蔵した超小型レーザープロジェクターから網膜に画像を直接投影し、装着者の視力やピント位置に影響を受けることなく、網膜への鮮明な映像の投影を可能にします」

 ――「通信」に関する事業展開を教えてください。

 「現在、世界的に光ネットワークが構築されていますが、パソコンやサーバーなどデバイスの内部はまだ『光』化されていません。無線通信が4Gから5G、さらに6Gに発展するにつれ、データ量、消費電力は増加の一途をたどることから、今後、データ処理速度の向上、消費電力の削減が必須です。当社の半導体レーザーを使ったシリコンフォトニクス(コンピュータチップの光通信)はこれらの課題を解決できるため、シリコンフォトニクスの市場が拡大に向かう局面において、需要は爆発的に増えるでしょう。シリコンフォトニクスは自動運転やドローン(小型無人飛行機)などでも重要な技術になることもあり、需要はより一層の拡大が見込めます。当社は高温のシリコンチップ上でも動作できる量子ドットレーザーを世界で唯一量産できるため、日米欧のパートナー会社9社と半導体レーザーを使ったシリコンチップを共同開発し、NEC(6701)からスピンオフしたAIOコアがサンプル出荷を開始しています。間もなく量産できるようになる予定です」

レーザアイウェアの市場開拓を推進

 ――「ディスプレイ」はいかがですか。

 「網膜走査型レーザアイウェア『RETISSA』は既に製品化しており、『医療機器モデル』は国内で販売承認されています。日本、欧州で屈折異常、角膜混濁の方に対し治験を実施し、対象者全員に良好な結果が出ました。欧州で1年間の安全性も確認されています。今後は高性能商品の開発とともに、低価格化、他企業との連携を進め、普及を目指します。盲学校への寄付、体験者インタビュー、クラウドファンディングなどを通じ、認知度の向上にも努めます。加えて、網膜投影は字幕をAR(拡張現実)表示することも可能で、AR向け利用の促進にも取り組んでいきます。市場規模が9000億円以上あるとみられる日米欧にとどまらず、将来は中国を含む眼科医療非先進国市場への展開も想定しています」

 ――業績動向についてはどう考えていますか。

 「2022年3月期はLD事業において、国内だけでなく、北米、欧州、アジアで精密加工用DFB(分布帰還型)レーザー、バイオ検査装置用小型可視レーザー、センサ用高出力レーザーなどの受注が増加しています。減価償却費、開発費などの費用減少もあって、LD事業は上期として初めて営業黒字化しました。また、LEW事業も取り扱い医療機関、販売代理店の増加もあって順調に伸びています。コロナで取りやめとなっていた各種展示会も再開しつつあり、下期には展示会へ出展し、さらなる販売拡大を図ります。LEW事業も来期あたりには黒字化し、1~2年後には通期決算の黒字化も目指します」

 ――そのほかに期待される事業はありますか。

 「LEW事業はヘルスケアの領域でも有望です。高齢化に伴い、緑内障などを患うことで失明のリスクが高まりますが、レーザー網膜投影技術を活用した検眼器がその早期発見に役立ちます。新しい検眼装置は小型、安価で、短時間の自己検診も可能であるため、緑内障早期発見率が高まり、目の健康寿命を延ばすことが期待されます。同装置によるタクシー会社のドライバーの視野検査の結果、高齢化に伴う視感度の低下が多く発見されました。現在、同検眼装置の適用について、タクシー会社と検討を始めています。同装置は提携先と来期~再来期の上市に向け開発を進めています」

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