2022年の日本株見通し―ボラタイルな展開か、景気・業績回復期待も不透明要因多い

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2022/1/1 9:00

 2022年の東京株式市場は、価格変動率の大きいボラタイルな展開か。景気・企業業績の回復期待を背景に上昇トレンドを基本線としつつ、新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」や米国の金融政策など先行き不透明な要因が多く、状況によっては調整色が強まる可能性もある。日経平均株価の想定レンジは2万5,000円~3万2,000円。

2021年の日経平均は一時約31年ぶりの高値水準に

 2021年の日経平均株価(終値ベース)を振り返ると、新型コロナウイルス「デルタ株」の感染拡大による景気減速懸念などが重しとなり、8月20日に年初来安値2万7,013円を形成した。その後は一転して急騰を演じ、9月14日には3万670円を付け、1990年8月以来約31年ぶりの高値水準に浮上した。自民党総裁選を前にした政策期待の高まりや新型コロナ・ワクチンの接種進展などを背景に投資家心理が好転した。以降は、10月初旬に向けて調整を入れ、11月にかけて持ち直したが、3万円復帰には至らなかった。足元では、レンジ内(取引時間中ベースで8月20日安値2万6,954円-9月14日高値3万795円)での動きに終始し、次なる展開を探っている。

新年相場の注目点は景気回復路線

 新年相場の注目点としては、景気回復路線が挙げられる。OECD(経済協力開発機構)が21年12月1日に発表した「エコノミックアウトルック(経済見通し)中間報告」によると、22年の世界経済成長率は4.5%(前回予想比変わらず)。米国、ユーロ圏などが下方修正される中、日本は3.4%(同1.3ポイント上昇)に上方修正された。

 また、内閣府が21年12月23日に公表した政府経済見通しによると、22年度のGDP(国内総生産)成長率は実質で3.2%となり、7月の年央試算から1ポイント引き上げられた。55.7兆円規模の経済対策効果の発現に加え、新型コロナウイルスの感染拡大で出遅れていた個人消費を中心に民需主導で経済が回復する道筋を描き、企業業績も上向きが観測されている。新年は海外に比べ優位となる日本株市場への資金流入が期待され、日経平均3万円は通過点に過ぎないとの見方は多い。

「オミクロン株」対応進むも感染拡大には警戒

 気になる新型コロナ変異株「オミクロン株」については、感染率が高い一方、重症化率が低いとの研究発表が相次いでいる。国内ではワクチンの2回接種率が8割近くに達し、3回目のブースター接種も医療従事者から始まり、年明けからは本格化する。加えて、英米に続き、厚生労働省は21年12月24日、米メルク製の新型コロナ治療薬「モルヌピラビル」(商品名:ラゲブリオ)を特例承認した。軽症・中等症向けで、自宅で使いやすい初の飲み薬となり、政府のオミクロン対応は着実に進んでいる。

 もっとも、東京、大阪などで市中感染が相次いで確認され、先行きへの警戒感は拭えない。山際大志郎経済再生担当相は21年12月24日の記者会見で「面的に広がれば、行動制限強化を含め機動的に対応する」と述べた。海外では、欧米はもとより東南アジアでも感染確認が広がり、外出制限などの厳格化により、サプライチェーン(供給網)の混乱が再燃すれば、世界経済回復は停滞を余儀なくされよう。

予想以上の米金融引き締め示唆なら動揺も

 特にリスク要因としては、米金融政策の変化が市場のかく乱要因となり得る。FRB(米連邦準備制度理事会)は21年12月15日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で量的緩和縮小のペースを加速させることを決めた。物価上昇リスクを踏まえ、資産買い入れは従来想定より3カ月早く22年3月をメドに終える。その後、ゼロ金利の解除に踏み切り、22年中に計3回の利上げが見込まれている。金融正常化は織り込み済みとはいえ、高インフレが続き、FRBが市場予想を上回るペースで金融引き締めを示唆すれば、マーケットが動揺することにもなる。

 このほか、不安要素として、北京冬季五輪(開催期間は22年2月4~20日)後に米中摩擦が再燃するとの見方が少なくない。中国の規制強化、経済減速懸念や、新疆ウイグル自治区の人権問題を巡る中国と国際社会との対立も引き続き懸念要因となる。また、バイデン米大統領の支持率低下とともに、米中間選挙(22年11月8日投開票)では、与党が上院・下院ともに議席を減らし、共和党の反対により、困難な政権運営を強いられるとみられている。国内でも参議院選挙(22年夏予定)を控え、岸田政権の運営手腕が問われる。米国では法人税増税、国内では金融所得課税強化の可能性がくすぶるなど注視すべき点は多岐に渡る。

中・長期的観点から環境対策関連など注目

 最後に物色対象としては、中・長期的な観点から、市場拡大が予想される再生可能エネルギー、EV(電気自動車)などの環境対策関連株が引き続き注目される。生産性向上のための自動化・省力化分野の設備投資関連株や、DX(デジタルトランスフォーメーション)関連株もマーク続行となる。むろん、コロナ禍が沈静化するようであれば、飲食・レジャーなどリオープニング(経済活動再開)銘柄に見直し買いが集まろう。半導体関連株については、需要好調で業績拡大基調から株価は高値推移が予想されるが、金利上昇局面でのハイテク株売りの波が起これば、調整につながることになる。

(木村 重文)

(写真:123RF)

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