JFLAH、成長シナリオを檜垣社長に聞く
乳製品や調味料などの生産や食品卸、外食事業などを展開するJFLAホールディングス(3069・JQ)は今3月期に、連結営業損益6.7億円の黒字(前期は11.9億円の赤字)への転換を見込む。「食を通じた新たな価値の創造と提供」をテーマに、筋肉質な収益構造への転換によって、ウィズコロナの新常態における業績成長を目指す同社。新たな中期経営計画では、2025年3月期の目標として売上高880億円、営業利益20億円を掲げた。その意気込みを檜垣周作社長に聞いた。
――新中計をこのタイミングで打ち出した背景は?
「13年9月の弘乳舎の子会社化を機に、従来の外食を主たる事業とする企業から販売・流通・生産で構成される『食のバリューチェーン』に転換した。18年3月期まで6期連続増収増益を続けるなど、着実に収益を積み上げたが、18年8月のジャパン・フード&リカー・アライアンスとの経営統合によるグループ会社や有利子負債の増加、さらには20年から続くコロナ禍による外部環境の変化もあり、改めて今後の持続的成長に向けた事業戦略の再構築する必要性が生じた」
――売上高と営業利益の成長をけん引する要素は何か。
「新中計で『新たな価値を創造し提供するグローバル食品・飲料メーカーへ』をうたったのは、乳業や調味料、清酒など発酵・醸造技術を持つ生産事業がグループの成長のエンジンとなるからだ。業務用食材や酒類飲料を手掛ける流通事業のアルカン、東洋商事に加え、販売事業(外食)においても製販一体型事業を構築し収益成長の原動力にしていく。業務用がメインの東洋商事は20年4月に家庭用総菜の製造販売を手掛けるモリヨシを子会社化し、アルカンにおいては21年11月にワインや洋酒などを家庭用チャネルで販売する輸入商社の東栄貿易を子会社化した。また、Uberと提携して個人宅への宅配を進めるなど新たなデリバリーサービスを開始している」
「販売事業は牛角のエリア本部の売却や居酒屋事業の縮小を行う一方で、製販一体型モデルの強化をしている。具体的には、「BAGEL & BAGEL」「ル・ショコラ・アラン・デュカス」「ルパンコティディアン」をはじめとする高付加価値ブランドを中心にポートフォリオを拡充しており、来期にはフランス食品大手のベルトラン・グループが所有する世界的に知名度の高い老舗洋菓子「アンジェリーナ」ブランドの合弁事業を本格的に始動させ、さらなる成長を目論(もくろ)んでいる」
「また、21年1月に、アスリート専門のフィットネス事業を展開するDAHを子会社化し、DAHが保有するノウハウとデータに生産事業の発酵・醸造技術を活用し食事と健康をプロデュースすることでアスリートを中心に一般の健常者や高齢者向けの新たな付加価値サービスを展開していく」
――今期も収益改善が進みそうだ。
「事業別でみると、グループ全体売上の6割を占める生産事業は引き続き堅調に推移している。今後成長が見込まれるヨーグルトや、豆乳などのデイリーフリー製品の大型設備投資に伴う減価償却費が増加したため前期比で減益だが、キャッシュフローベースでは伸びている。また、流通事業や販売事業においても、海外部門を中心に不採算事業の撤退を含め抜本的なリストラを断行したことで、収益性が大幅に改善してきている」
――さまざまな食品の原材料やエネルギーの価格が高騰している。
「大豆や小麦、物流費の上昇の影響を受けているが、調味料メーカーの盛田では、しょうゆなどの価格を22年3月出荷分から値上げする。一方で、豆乳の販売が伸びている九州乳業においては、大豆の調達が長期で手当てが出来ているので影響は限定的だ」
――乳業事業といえば、昨今話題の「生乳大量廃棄」については。
「弘乳舎による『余剰乳』(注)の受託加工事業が好調に推移している。同社は西日本唯一の受託指定工場で、最大級の加工処理能力を保有している。社会的な課題である食品ロス削減にも寄与している」
――配当の考え方は? また、優待をかなり厚くしている。
「株主還元を経営の重要政策の1つとして認識しており、安定配当を行う基本方針を重視している。21年3月期は赤字でも配当をさせていただいた。今期も、赤字だった前期と同様に1株あたり4円の配当を予定している」
「優待に関しては、グループの取り組みを一層知っていただくことで、株式を中・長期的に保有してもらいたく思っている。当社グループの食事券や商品を含めて、たくさんの商品を取りそろえている。好評をいただいており大変うれしいことだ」
※注・季節要因による飲用乳需給の不均衡で生じる余剰な生乳
【株価見通し】
不採算事業の縮小やコスト削減など、収益性改善へ向けた成果が現れたことで、コロナ禍からの業績回復が進んでいる。新中計によって、生産・流通・販売の食の3軸による中・長期的な成長イメージが示されたことも評価ポイントだ。一方で、同社は、成長投資や財務基盤強化のため、10月に行使価額修正条項付新株予約権を発行している。新株予約権個数8万3000個(潜在株式数830万株)の権利行使が12月末時点で約40%であるため、短期的には残りの権利行使による需給悪化警戒感から株価が不安定になりやすい可能性もあることに注意したい。
(写真:123RF)
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