米12月中古住宅販売件数、前月比4.6%減の年率618万戸―市場予想下回る

経済

2022/1/21 10:46

<チェックポイント>

●販売件数減は需要低迷よりもサプライチェーン問題

●21年は前年比8.5%増の612万戸―06年以来15年ぶり高水準

●今後、住宅ローン金利加速と住宅価格高騰で販売低迷へ―市場観測

 NAR(全米不動産業協会)が20日発表した21年12月中古住宅販売件数(季節調整済み)は、前月比4.6%減の年率換算618万戸と、11月の同2.2%増を下回り、21年8月(588万戸)以来4カ月ぶりの低水準となった。市場予想の644万戸に対しても下回った。

 季節要因を無視できる前年比も7.1%減となり、5カ月連続で前年水準を下回った。

 ただ、21年全体では前年比8.5%増の612万戸と、コロナ禍前の19年全体の534万戸や20年全体の564万戸を上回り、06年以来15年ぶりの高水準となった。

 NARのチーフエコノミスト、ローレンス・ヤン氏は、「販売減少は住宅需要の低下よりもサプライチェーンのボトルネック(制約による品不足)による要因の方が大きい」と見ている。その上で、「住宅ローン金利の上昇を受け、今後数カ月、中古住宅販売は伸びがやや鈍化する可能性がある。ただ、最近の雇用市場は失業率が低く、労働者不足で賃金が上昇するなど雇用市場が強いため、販売件数が大崩れする可能性は低い」と販売見通しについて述べている。

 住宅供給の過不足感を示す12月時点の未販売住宅(在庫)は前月比18%減(前年比14.2%減)の91万戸と過去最低となった。また、12月の販売ペースに換算した在庫水準も1.8カ月分と4カ月連続で低下し、11月の2.1カ月分と1年前の1.9カ月分を下回り、過去最低となった。

 中古住宅の販売ペースをみると、販売物件が12月中に市場に残っていた期間は19日間と、11月の18日間を上回ったが、1年前の21日間を下回り、依然、過去最短に近い。12月中に販売された物件のうち、全体の79%(11月は83%)が市場に出てから1カ月弱で販売されており、中古住宅の購入競争が激しいため、すぐに売り切れる状況が続いている。

 地域別販売件数は、全体の4割以上を占め、最もウエートが大きい南部が前月比6.3%減(前年比5.3%減)の270万戸と、11月の急増から減少に転じた。中西部も同1.3%減(同2.6%減)の150万戸、西部は同6.8%減(同10.2%減)の123万戸、北東部も同1.3%減(同15.7%減)の75万戸にとどまった。

 住宅価格は中央値で前月比1.0%上昇の35万8000ドルと3カ月連続で上昇し、前年比は15.8%上昇と118カ月連続で前年水準を上回り、21年6月の過去最高値(36万2800ドル)に近づいた。主力の一戸建ても同様で、12月は前年水準より16.1%高い36万4300ドル(前月比0.8%上昇)となった。

 住宅価格が低下しない要因の1つに、格安なフォークロージャー(住宅不動産の差し押さえ=競売)物件やショートセールズ(フォークロージャー手続きに進む前の早い段階で債務者と債権者が協議して住宅を任意売却)物件などのディストレスト物件の供給が細っていることがある。12月のディストレスト物件の販売比率は1%弱と11月や1年前と変わらなかった。

 一方、手ごろな価格帯の住宅供給不足と高水準の住宅価格を反映し、12月の新規住宅取得者の比率は30%と11月の26%から上昇したが、1年前の31%を下回っており、依然、低水準となっている。

 市場では、住宅ローン金利が22年に入り、急上昇していることや、在庫不足による住宅価格の高騰で住宅購入者のアフォーダビリティー(住宅取得能力)が低下し、今後住宅販売が先細りとなる可能性があるとみている。

<関連銘柄>

 NASD投信<1545.T>、NYダウ投信<1546.T>、上場米国<1547.T>、

 SPD500<1557.T>、NYダウ<1679.T>、NYダウブル<2040.T>、

 NYダウベア<2041.T>

提供:モーニングスター社

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