海外株式見通し=米国、香港
【米国株】ITバブル後の出世株は?
1月21日のネットフリックス<NFLX>の株価は、決算発表で新規契約者数の伸び悩み見通しが嫌気されたとはいえ、終値が前日比20%を超える大きな下落となったのは市場を驚かせた。米上院司法委員会でIT大手の自社優遇禁止法案が可決されたこともあり、これから決算発表される巨大テック企業に対しても市場の目は厳しくなると予想される。
ITバブルのピーク直後の2000年3月末から3年間におけるS&P500指数構成銘柄で、現在も上場している企業における値上がり率上位10銘柄とその値上がり率を調べると、1位は金属・プラスチックメーカーのボール<BLL>で253%、2位が教育ローン・サービスのSLM<SLM>で226%、3位ヘルスケア・管理医療サービスのユナイテッドヘルス・グループ<UNH>で220%だ。
さらに、4位は総合エネルギー会社のエンタジー<ETR>で170%、5位自動車専門部品のオートゾーン<AZO>で152%、6位が公益事業会社のサザン<SO>で150%、7位は建設会社のパルトグループ<PHM>で148%、8位が防衛用航空機メーカーのロッキード・マーチン<LMT>で135%、9位が保険会社のプログレッシブ・コープ<PGR>で128%、そして10位が玩具メーカーのマテル<MAT>で122%だった。
03年3月にイラク戦争が開始されたことから防衛関連銘柄のパフォーマンスが相対的に良かった面はあるものの、ナスダック銘柄を中心に下落した時期の物色傾向として参考になる。
また、世界経済の全般的な商品価格動向とインフレを示す先行指標の「S&P GSCIトータルリターン指数」の対S&P500指数の倍率は、ITバブル崩壊後の02年ごろからリーマン・ショック直前の08年半ばごろまで上昇。同倍率は歴史的最低水準近辺にあり、インフレ局面でのコモディティー(商品)主導でのバリュー・景気敏感株中心の相場展開も想定される。
【香港株】中国・アセアンの越境ECで見直されるアリババ
中国・アセアン(東南アジア諸国連合)間のライブビデオ配信による越境EC(=Eコマース、電子商取引)が急成長している。その越境ECの販売プラットフォームと金融サービスを提供する主役に位置付けられるのは、アリババだろう。
同社は昨年、取引先に対してアリババの競合企業と取引しないように迫ったことが独占禁止法違反と認定されて約3000億円相当の罰金処分を課された。それに加え、低価格の共同購入型EC「ピンドゥオドゥオ」の急速な台頭に対抗する目的から、競合のテンセントと提携した低価格販売ECプラットフォーム「淘宝(タオパオ)特価版」に注力。これが利益率を低下させる要因となった。
また、中国政府によるテック企業への規制強化を受けて株価は20年11月の過去最高値から60%以上下落した。
その一方で、海外向けECである「海外コマース」はクラウドコンピューティングに次ぐ売上成長事業となっている。海外向けECの中でもシンガポール拠点の「ラザダ」は東南アジア最大級のECプラットフォームとして、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムでサービスを提供。1つのアカウントでその6カ国の越境ECを管理できる。アリババが有する中国とアセアンのECプラットフォームが一体化されれば、同社の成長加速が期待されるだろう。
世界経済は現在、景気拡大局面に差し掛かりインフレ率が上昇しているが、中国経済は不動産業界の信用不安などに備えるため金融を緩和する局面にあるとみられる。中国人民銀行(中央銀行)は1月20日、新規貸出金利の指標となるローンプイライムレートの1年物を3.7%へ2カ月連続で引き下げ、5年物も4.6%へと0.05ポイント引き下げた。資金調達総額やマネーサプライも前年同月比で上昇が加速している。中国株は「不況下の株高」と言われる金融相場の時機を探る段階と言えそうだ。
※右の画像クリックでグラフ拡大
(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)
(写真:123RF)
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