FRACTA、脂肪組織由来幹細胞を用いた腹圧性尿失禁の治療で子会社が保険適用申請へ

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2022/3/8 8:30

 FRACTALE(3750・(2))は、不動産の売買などを主力としていたが、いまはメディカル分野に軸足を移している。2月9日には完全子会社であるサイトリ・セラピューティクスが男性腹圧性尿失禁治療に関する医療機器の国内製造販売承認を取得したと発表した。

 腹圧性尿失禁は、腹部に力が入ったときに尿もれしてしまう病気で、男性の場合は前立腺がんの手術を受けた患者などが多い。直接生命にかかわるのは稀(まれ)だが、生活の質(QOL)を著しく低下させる。

 サイトリ・セラピューティクスの白浜靖司郎社長(写真)によれば、同社が開発した「セルーション セルセラピーキット SUI」は皮下脂肪組織から脂肪組織由来幹細胞(ADRCs)を分離・抽出できるもので、腹圧性尿失禁の治療ではADRCsを尿道括約筋部に注入するなどして物理的に尿道を閉塞(へいそく)することで症状を改善できる。一連の治療は約3時間程度でできるという。

 サイトリ・セラピューティクスでは速やかに保険適用を申請する予定で、ほかに有効な治療法がないことから、来3月期第2四半期(2022年7~9月)までには適用が認められると期待される。保険適用後について、白浜社長は「まず泌尿器科の医師などに対して『セルーション セルセラピーキット SUI』の使用方法などを広めていく必要があり、当初は医療従事者への教育セミナーなどを積極的に開催していく方針」としている。

 また、今回は男性を対象とした治療での販売承認の取得だが、女性を対象とした治験も計画しており、いずれは性別を問わず対応できるようにする。腹圧性尿失禁の患者数は約400万人だが、比率としては女性の方が多く、需要も拡大が見込まれる。

 「セルーション セルセラピーキット SUI」から抽出されるADRCsを用いた治療では、脳梗塞(こうそく)や脊髄(せきずい)損傷、乳房再生、膝(ひざ)関節疾患などにも利用されており、国内だけで3000症例、世界では8000症例に及ぶという。白浜社長は「いずれも保険適用は将来的な話になるが、腹圧性尿失禁のように確実なものから進めていく」としており、適用されればより多くの患者を救う治療技術の一つとなりそうだ。

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