シナネンHD、山﨑社長に聞く――脱炭素・非エネルギー分野強化へ
2022/3/24 8:50
シナネンホールディングス(8132)は豆炭などの固形燃料メーカーとして1927年に創業し、その後時代の変化に合わせて石油やガスの販売へとシフトしてきた燃料商社。現在は、2027年の創業100周年に向けて、脱炭素に対応した事業ポートフォリオへの見直しを進める。化石燃料由来の製品への依存を低減する一方で、再生可能エネルギーやシェアサイクル(自転車シェアリング)などの分野を強化。企業風土改革にも力を入れる。山﨑正毅社長に意気込みを聞いた。
――現在は23年3月期を最終年度とする第2次中期経営計画を推進している。その位置付けと、24年3月期からの次期中計の方向性が知りたい。
「第2次中計は、第3次中計のための基盤整備の期間という位置付けのため、売上や利益の定量目標をあえて掲げていない。しかし、上場企業としての責任もあるため、低効率領域からの撤退や、遊休不動産や低稼働不動産の売却など資本効率の改善を図ることにより、定量目標としては、ROE(自己資本利益率)6%を目安にしている。資産売却で得た資金は新規事業の育成や発掘に充て、そのための人材投資も進めている」
「第3次中計ではROEの水準を持続的に8%以上に高めたい。現在主力の石油類の卸売事業は固定マージンのため利益率が低い。新たなステージでその源泉となるのは新規事業だ。既存事業に大きく依存しない事業ポートフォリオをつくり上げることで、利益率の向上につなげていく」
――新規事業にはどのようなものがあるか。
「1つは再生可能エネルギー。カーボンニュートラルに向けた世界的な潮流は、再生可能エネルギーに軸足を移す上でのチャンスと考えている。まずは、太陽光ビジネスを柱に、新型マイクロ風車、バイオマス発電といった事業に取り組んでいく。また、シェアサイクルも大きく伸ばしていく考えだ。19年に事業会社を立ち上げたが、来期は黒字化が見込まれる」
――シェアサイクルの利用者数は順調に拡大している。
「設置自転車は1万台を超え、国内首位級だ。運営ステーションの数も、この1年で600カ所以上増え、2100カ所まで拡充したほか、利用者が使いやすいよう設置場所の精度を上げている。こうしたインフラだけではなく、メンテナンスにおいても自転車販売の事業で積み上げたノウハウが生きており、参入障壁の高い分野であり着実にシェアを高められている」
「今後は、利用者を特定のマンションの住人に限るような『クローズド型』のサービスも本格化していく。また、2月に新設したメンテナンス拠点『エコベース』により、ユーザーの利便性向上を図りつつ、シェアサイクルを利用するだけで脱炭素に寄与する取り組みも始めており、企業としてSDGs(持続可能な開発目標)に貢献していく。『エコベース』にはグループ会社のシナネンの環境配慮型電力を採用することで、グループシナジー(相乗効果)も生んでいる」
――そのシェアサイクルをはじめ、非エネルギー分野に注力していくとか。
「石油やガスは、世界的なカーボンニュートラルの方向性を踏まえると、長期的には厳しい。会社全体として、気候や天候の変動に影響を受けにくい体質を築き、利益率を向上させるためにもエネルギー分野以外のビジネスを強化する必要がある。シェアサイクルのほかにも、建物維持管理や抗菌剤の事業を伸ばしていく。脱炭素に向けて、現在約3割ある非石油・ガス分野の利益比率をさらに高めていきたい」
「建物維持管理事業は集合住宅向けを中心に、傘下の3社で展開している。今後は、単なるメンテナンスにとどまらず、自社で扱うLP(液化石油)ガスや電力などエネルギーの販売も組み合わせてシナジーを追求していく。また、抗菌剤は国内外で売上を伸ばしてきたが、今後は海外市場でのさらなる拡販を狙う。コロナ禍をきっかけに、商機が広がっている」
――企業風土改革にも取り組んでいる。
「積極的に外部からの人材を途用しているほか、女性社員の活躍推進も含め人材育成に向け積極的に取り組んでおり、研修費用も積み増した。また、各事業会社から『変革リーダー』を選び、社員一人ひとりの成長を目指すとともに、従業員が新しい発想を持ちやすい環境をグループに浸透させている。新たな時代に適した事業ポートフォリオを構築するにも、まずはヒトの部分を強化する必要がある」
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