海外株式見通し=米国、香港

【米国株】過去の利上げ局面を参考に

 FRB(米連邦準備制度理事会)は3月16日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、政策金利の誘導目標を0.25ポイント引き上げた。参加者の政策金利見通しでは来年までに利上げ回数が11回前後となり、最終的に2.75%まで高まるとの予想が示された。

 前回の利上げ局面では、2015年12月~18年12月までの3年間で9回(合計2.25ポイント)の利上げが実施された。15年後半からの「チャイナ・ショック」、16年6月の英国のEU(欧州連合)離脱に係るブレグジットの国民投票などの売り材料に押されて、NYダウも利上げ後の約半年間は利上げ直前の1万8000ドル近辺を上限、1万5500ドル近辺を下限とするレンジ相場で推移した。

 その後はトランプ前米大統領当選後の「トランプ相場」で堅調に推移。米10年国債利回りは15年12月~16年6月ごろまで2%台前半から1%台半ばまで低下し、その後は18年10月の3%超まで上昇基調となった。

 前々回の04年7月~06年6月までの約2年間は、利上げ回数が17回(合計4.25ポイント)に及ぶほどタカ派色が強かったが、NYダウは利上げ直前の1万ドル近辺から2年後の1万1500ドル近辺まで緩やかに上昇した。エネルギーや穀物、貴金属、非鉄金属などコモディティー(商品)相場の高騰を背景にバリュー(割安)株優位の相場が展開された。その間、米10年国債利回りはおおむね4%台のレンジ圏で動いていた。

 今回の利上げ局面は、コモディティー相場の高騰を背景とする点では前々回の利上げと類似している面が大きいのかもしれない。それに加え、新型コロナウイルスの感染リスクが残る中で、ワクチン接種と飲み薬の供給といった基盤の上で世界的な経済再開も重視される。ハイテクやバイオ技術関連については、PER面での割高感の解消度合が重視されるだろう。

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【香港株】中国のウインタースポーツ市場が拡大

 中国では「ウインタービジネス関連の人口を3億人に増やす」という目標を政府が掲げ、スキーやスケートが学校教育の過程に含まれるようになった。中国の前瞻産業研究院によると、中国内のウインタースポーツ市場規模が25年に1兆元に達する見込みである。

 スキーは、「インスタ映え」の観点からインフルエンサーによるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)投稿がブームを加速させている。また、人工雪とAI(人工知能)技術によって本物のようなスキー場がつくり出されており、屋内のスキー場が増加している。

 スケートについても、中国国務院が昨年8月に発表した「国民健身計画」の中で、地域でトレーニングできる公共施設に差があることが問題視されていることを受けて、インフラ面で、5000以上の郷鎮(中国の県級市の末端行政自治区単位)でフィットネス用機材配置のほか、スケート場の建設が具体的目標として掲げられた。

 中国のウインタースポーツは、季節も場所も問わず楽しめる環境の下で、北京冬季五輪をきっかけに巨大レジャー市場へと変ぼうを遂げる可能性がある。

 中国の2大国産スポーツブランドである李寧(リーニン)と安踏体育用品(アンタ・スポーツ・プロダクツ)が3月22日までに21年度通期決算を発表。李寧は前期比56%増収、同約2.4倍の最終増益となり、安踏体育は同39%増収、同約2.3倍の最終増益と急成長した。

 「新疆綿」問題で外国企業が中国消費者の批判から不買運動が展開された恩恵だけでなく、機能やデザインに磨きを掛けてブランド求心力を高めたことも大きな要因だろう。

 今後の業績見通しについては、北京五輪のオフィシャルスポンサーだった安踏体育は、開会式や閉会式だけでなく多くの競技で選手のユニフォームに採用されたことによる宣伝効果が業績を押し上げそうだ。李寧は、中国の伝統文化や漢字を融合させたデザインが代表的な「国潮」(中華風トレンド)として若者への人気を高めている点が注目される。

(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)

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