ACSL、「ドローン元年」で飛躍
2022/3/28 8:50
「『ドローン(小型無人飛行機)元年』と呼ぶにふさわしい年になる」――。専業で唯一の上場企業であるACSL(6232・M)の鷲谷聡之社長兼COO(最高執行責任者)は、市場のかつてない熱量の高まりに興奮を隠さない。社会実装の本格化が視野に入る中、各産業での活用増につながる法制度の変更も控える。
「国産」に追い風強まる、法改正も期待材料
同社は用途に応じたドローンの機体やシステムを初期段階から開発するほか、実用化へ向けた実証実験の受託から量産対応、アフターサービスまで幅広い領域をカバー。また、各種認証に裏付けられた純国産のプラットフォームにより、顧客に安心安全を担保する。
ドローンの市場はまだホビー用途が中心で、コスト競争力のある中国メーカーが先行してきた。しかし、物流やインフラ点検といった産業分野への導入が増えつつある中で、用途に応じた機能性の高い専用機が求められるようになっている。データセキュリティーをめぐっても、国産品の活躍の場が広がってきた。
地方の社会インフラ支援や脱炭素の観点からも、ドローンのポテンシャルは大きい。ドローンによる物流は、岸田文雄首相が掲げる「デジタル田園都市国家構想」の実現に欠かせない技術の1つに位置付けられるほか、大量の化石燃料を消費するトラックや船舶でのモノの輸送を代替することで、二酸化炭素(CO2)排出削減に貢献する。
一方、規制面でも追い風が吹く。改正航空法により6月から機体の登録が義務化されるほか、12月には「レベル4」と呼ばれる、有人地帯における目視外飛行の解禁が視野に入る。市街地の上空を認可されたドローンが飛行できるようになることで、産業分野での活用幅が一気に拡大する公算だ。
受注残は過去最高、10年後市場規模3000億円へ
ACSLの前2021年12月期(変則決算、昨年4~12月)末の受注残高は、10.8億円(決算期変更前の21年3月期末の4.7倍)と過去最高の水準にある。高セキュリティー対応の小型空撮機体「SOTEN(蒼天)」の需要が好調なもようだ。
同社は小型空撮のほか、下水道や排水管など閉鎖環境の点検専用機を上市している。また、煙突点検向け、物流専用機もそれぞれ今年、来年の投入を目指して量産開発中だ。日本郵政(6178)グループの日本郵政キャピタルは、ACSLに30億円を出資している。
大手各社や官公庁によるドローン活用の意思決定が相次ぐ一方で、経済安保を重視する流れの中で既存の機体や部品、システムを国産に回帰する動きが同時進行している。「今後3~5年で社会実装が大きく進む」とみる鷲谷社長は、30年には空撮、物流、閉鎖環境、煙突の4用途でドローンの市場規模が3000億円に成長すると予想している。
今期は半導体不足や原材料高が逆風となりそうだが(連結営業損益の見通しは6.5億円の赤字~3.5億円の赤字)、中・長期的な業績期待値は一段と高まっている。08年に掲げた、10年後の姿を示す「マスタープラン」では、売上高1000億円以上、営業利益100億円以上を目標とし、年間3万台の生産能力を持ってデファクト・スタンダードで国を支える企業を眺望している。
(写真:123RF)
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