<新興国eye>世銀、半期経済報告を発表―カンボジア経済にも暗雲たなびく

新興国

2022/4/22 11:16

 4日に世界銀行(世銀)は、東アジア・大洋州地域半期経済報告(2022年4月)を発表しました。

 報告書では、東アジア・大洋州地域では、長引くコロナ危機、米国の金融引き締め、ゼロコロナ政策継続中の中国での感染再拡大により経済的困窮が広がっていましたが、そこへ新たにロシアとウクライナの戦争が加わったと指摘しています。世銀では、「ロシア・ウクライナ戦争とロシアへの経済制裁による打撃が、一次産品の供給混乱と財政圧迫を招き、グローバル経済の成長を妨げている」と分析しています。

 カンボジア経済については、21年のGDP(国内総生産)成長率予測をこれまでの2.2%から3.0%に引き上げました。22年は4.5%、23年は5.8%に回復すると予測しています。縫製品や自転車などの輸出が早期に回復した一方、観光セクターの不況が厳しいとしています。21年の輸出は、22.8%増と健闘しました。ワクチン接種の進展で観光も緩やかに回復すると見込んでいますが、新型コロナの影響は長引くとしています。

 物価上昇率は、21年3.5%、22年6.5%、23年4.5%と、ロシアのウクライナ侵攻の影響も受けた資源・食料の値上がりにより、懸念材料となると予測しています。経常収支の赤字(対GDP比)は21年に28.5%まで悪化したものの、21年末の外貨準備は若干減少の197億ドル(輸入の9カ月分)と非常に安定的なレベルを維持するとしています。

 経済回復を確実なものとしていくための課題としては、改正投資法の活用などによる輸出競争力の強化、ビジネスコストや輸送・エネルギーコストの削減によるサプライサイドのボトルネックへの対処などを挙げています。リスクとしては、ロシアのウクライナ侵攻の影響も受けた資源・食料のさらなる値上がり、主要マーケットの需要減退などを挙げました。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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提供:モーニングスター社

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