【2022・GWコラム】ジリ貧のコメ消費、食糧インフレで転機も

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2022/4/30 17:30

 世界的なインフレが日本にも忍び寄り、パンやパスタから食用油、調味料、チョコレートなどのお菓子に至るまで、相次ぐ値上げが家計を直撃した。円安も相まって外食産業の事業環境も厳しさを増すなど、物価高が日本経済に重くのし掛かっている。しかし、こうした中でも値段が抑えられている食糧がほかでもないコメだ。現状は、長年の消費者離れに歯止めを掛けるチャンスとも考えられる。

小麦代替、国内でも引き合い

 世界の食糧庫を巻き込んだロシアのウクライナ侵攻は、それ以前からひっ迫していた小麦の需給を一段と引き締めた。国際相場の上昇に伴い、日本政府から製粉会社への売り渡し価格は4月に従来比で17%も引き上げられた。大豆やトウモロコシも値上がりし、それらを原材料にする商品の価格に跳ね返っている。

 一方で、同じ穀物であるコメの国内市況にインフレの熱気はない。農林水産省が4月に発表した2021年産米の相対取引価格(60キログラム=1俵当たり)は、全銘柄平均が1万2777円(前年<20年産>同月比13%減)。特に外食向けの需要が振るわず、取引量は同9%減にとどまった。

 コロナ禍で飲食店への客足が遠のいたのもコメが安い理由ではあるが、そもそも需要が年々減少しているのはよく知られたことだ。国民1人当たりの消費量は20年時点で50.7キログラムと20年前よりも2割強少ない。少子化や食生活の変化が、構造要因として価格を押し下げている。

 しかし、歯止めの掛からないインフレはこうした状況を根底から覆す可能性を秘める。既に海外ではコメが小麦を代替する動きが加速し、今年1~2月のタイの輸出量は前年同期比で3割急増した。米穀卸の木徳神糧(2700)によれば、日本国内でも「(主食としてのコメのほか)米粉や飼料用米などの引き合いは強くなっている」(社長室)。

 日本のコメの自給率は事実上100%と全体(4割弱)を大きく上回り、なおも豊富な備蓄を抱える。国産米の消費拡大は未曽有の物価高を乗り越えるためにも、官民が一丸となって取り組む課題と言える。ウクライナ危機を受けて政府が打ち出した緊急対策には、食糧供給関連経費が盛り込まれた。

木徳神糧や亀田菓注目、穴株にエムケー精工など

 安価なコメの用途はパンや麺(めん)類、ケーキはもちろん、米粉を糖化した糖化液まで幅広い。また、増加基調にある輸出の規模も、まだまだ伸ばしていく余地があるだろう。そのためには、補助金頼みの農業を刷新し、農地の大規模化やIT技術の導入による生産性改善は欠かせない。

 思わぬ物価高をきっかけにコメの在り方が変わるかもしれない状況で、浮上する銘柄はどれか。前述の木徳神糧は今12月期までの中期3カ年計画で、仕入れルートの複線化や、精米工場への最新鋭機器の導入をはじめとする構造改革により収益性が改善している。来期からの新中計では、コメの用途拡大をこれまで以上に成長の原動力に据える公算だ。

 米菓「柿の種」で知られる亀田製菓(2220)も有力。小麦やトウモロコシが原材料のお菓子が一斉に値上がりする中で、節約志向を高める消費者の関心が米菓に向かう可能性がある。

 ただ、注目材料はそれだけではない。亀田菓は4月22日に、現在副社長のジュネジャ・レカ・ラジュ氏が新たにCEO(最高経営責任者)に就任する人事を発表した。ジュネジャ氏はインド出身で、ロート製薬(4527)の副社長などを経て20年に亀田菓に入社した。海外展開の強化も視野に米粉パンやコメ由来の乳酸菌を強化していく方針だ。

 このほか、米穀卸のヤマタネ(9305)や精米袋ののむら産業(7131)、農機のやまびこ(6250)やクボタ(6326)も関連銘柄としてマークしたい。また、穴株としては米粉パンを家庭で手軽につくれる「ホームベーカリー」のツインバード工業(6897)や、精米機や保冷米びつ、もちつき機などを手掛けるはエムケー精工(5906)を押さえておきたい。

(写真:123RF)

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