RBA、11年半ぶりに利上げを再開―利上げ幅は市場予想上回る0.25ポイント
2022/5/6 8:44
<チェックポイント>
●「今後さらに金利を引き上げる」―ロウ総裁、利上げサイクルを明示
●保有国債の償還金を再投資せず―量的金融緩和の縮小ペースは緩やか
●6月以降、年末まで毎回0.25ポイント利上げ―市場予想
豪準備銀行(RBA、中銀)は3日の理事会で、インフレ圧力の加速を阻止するため、政策金利であるオフィシャルキャッシュレート(OCR、銀行間取引で使われる翌日物貸出金利)の誘導目標を0.25ポイント引き上げ、0.35%とすることを決めた。市場予想は0.15ポイントの小幅利上げが大勢だったため、サプライズとなった。
RBAは20年11月会合で、コロナ禍の悪影響が現れ始めた21年3月以来8カ月ぶりに利下げを決めたが、同12月会合で据え置きに転換。前回4月会合まで16会合連続して現状維持を決めていた。利上げは10年11月以来11年半ぶりとなる。
また、RBAは資金吸収オペとして、市中銀行のRBAへの預入残高である為替決済(ES)バランス(銀行間決済口座)に適用される公定レートも0.00%から0.25%に引き上げた。
ロウRBA総裁は会合後に発表した声明文で、「インフレが長期的に目標に戻ることを確実にするために必要なことを行う」とした上で、「今後さらに金利を引き上げる必要がある」と述べ、利上げサイクルに転換したことを明確に示した。市場ではインフレ圧力が4-6月期以降も今後2年間にわたって高まる可能性があるため、RBAは次回6月会合を含め、年末までの各会合で0.25ポイントの利上げを実施すると見ている。
ロウ総裁は、「中国での新型コロナ感染拡大によるサプライチェーンの寸断と、ロシア軍のウクライナへの軍事侵攻の開始(2月24日)とそれに伴う西側諸国の対ロ経済制裁がインフレ上昇を引き起こし、消費者の購買力を低下させている」と利上げに踏み切った要因として、今回初めて中国の新型コロナ感染拡大でインフレ圧力が高まったことを挙げた。
また、ロウ総裁は今回初めて、利上げ開始のカギを握る賃金上昇のペースについての見方を変えた。「われわれの企業調査によると、現在、多くの民間企業で以前より大きな賃金上昇が起きている。ますます、多くの企業が従業員を囲い込むため、より高い賃金を支払うようになっている」とし、その上で、「完全雇用(失業率4%)に向けた進展、さらに物価と賃金の動向に関する明確な証拠を考えると、コロナ禍で提供された金融支援の一部を撤回し始めるのは今が適切な時期と判断した」と述べている。
今後のインフレの見通しについては、「短期的にはインフレ率はさらに上昇するが、供給サイドの混乱が解消すれば、インフレ率は物価目標レンジの2-3%上昇に向かって低下する」と見ている。具体的には、政策金利の継続的な引き上げを前提として、22年の全体指数の見通しを約6%上昇、コア指数を約4.75%上昇と予想。24年半ばまでに全体指数とコア指数は約3%上昇に減速するとしている。なお、1-3月期のインフレ率は全体指数が年率5.1%上昇、コア指数は3.7%上昇だった。
景気と雇用の見通しについては、「企業の求人者数も求人広告も高水準にある。中心予測で失業率は23年初頭までに50年ぶりの低水準である約3.5%に低下する」と予想。経済成長率については、22年は4.25%増、23年は2.00%増と予想している。
また、市場が注目していた、バランスシート(保有国債残高)の減額開始については、「(今後数カ月で)満期を迎える国債の償還金を再投資する計画はない。RBAのバランスシートは今後2年間で大幅に減少する見通しだ」とし、再投資を明確に否定。その上で、「コロナ禍でRBAが買い取った国債の売却は検討していない」とした。バランスシートはコロナ禍が始まって以降、3倍以上の6500億豪ドル超に達しているが、市場では当面、満期を迎える国債はそれほど量が多くないため、再投資中止による量的金融緩和の段階的縮小の金融市場への影響は軽微と見ている。
次回会合は6月7日に開かれる予定。
提供:モーニングスター社
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