<新興国eye>ベトナム航空、カンボジア国営アンコール航空の株式を一部売却

新興国

2022/6/17 12:31

 ベトナム航空がカンボジア国営のカンボジア・アンコール航空の株式35%を売却したと5月末に複数のメディアが報じました。

 カンボジア・アンコール航空は、カンボジアのナショナルフラッグキャリアーとして09年7月27日に発足。当初、株式は、カンボジア政府が51%、ベトナム航空が49%を保有していました。ベトナム航空は35%分の株式を売却金額3500万ドル(約45億円)で22年3月29日までに売却しており、約1800億ドン(約10億円)の利益が出ている模様です。なお、売却相手は公表していません。20年には株式を売却する意向を表明し、中国系企業に売却が決まったとの報道もありました。残る14%の株式についても年末までに売却する方針としています。

 ベトナム航空は新型コロナの拡大などで業績に悪影響が出ていることから、財務状況の改善が急務と判断して、株式売却に動いたものです。22年1-3月期の最終損益は、約2兆6000億ドンの赤字でした。21年12月期まで2期連続の最終赤字になっており、3期連続で最終赤字の場合、ホーチミン証券取引所の上場基準に抵触するため、資産売却を急いだものと見られます。

 世界の航空業界は、新型コロナの影響の影響で厳しい状況が続いています。カンボジアは、比較的早く、国境を越えた移動を再開していますが、観光客数はピーク時の数分の1にとどまっています。アンコール航空は、エアバス3機とプロペラ機ATR-72を3機しか保有していない小規模航空会社であり、コロナ禍で厳しい状況を乗り切るためには、新たな株主に加え、カンボジア政府からの支援も重要なものになるものと見られます。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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提供:モーニングスター社

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