米5月中古住宅販売件数、前月比3.4%減の年率541万戸―今後さらに減少見通し

経済

2022/6/22 10:55

<チェックポイント>

●住宅ローン金利上昇と価格高騰、供給不足が販売抑制

●住宅価格は前年比約15%上昇―過去最高値を更新

●住宅供給(在庫)は前月比12.6%増でも依然低水準

 NAR(全米不動産業協会)が21日発表した5月中古住宅販売件数(季節調整済み)は前月比3.4%減の年率換算541万戸と、4月の同2.6%減(改定前2.4%減)に続いて4カ月連続で減少した。市場予想の540万戸をやや上回った。前年比も8.6%減となり、10カ月連続で前年水準を下回った。

 NARのチーフエコノミスト、ローレンス・ヤン氏は、「住宅ローン金利の急上昇による住宅購入者のアフォーダビリティー(住宅取得能力)の悪化を考えると、今後数カ月、さらなる販売減少が予想される」と指摘している。

 住宅供給の過不足感を示す5月時点の未販売住宅(在庫)は、前月比12.6%増(前年比4.1%減)の116万戸と、4月の10.8%増に続いて3カ月連続で増加。21年の88万戸や20年の106万戸を上回った。ただ、05年の住宅ブーム時の200万戸を約40%下回っている。また、5月の販売ペースで換算した在庫水準は2.6カ月分と、4カ月連続で上昇。4月の2.2カ月分や1年前の2.5カ月分も上回ったが、依然、低水準。ヤン氏は、「住宅価格の上昇を抑え、住宅購入者に多くの選択肢を提供するため、在庫水準が大幅に上昇する必要がある」と懸念を示している。

 地域別販売件数は、全体の4割以上を占め、最もウエートが大きい南部が前月比2.8%減(前年比8.4%減)の241万戸と、4カ月連続で減少。南部に次いで大きい西部も同5.3%減(同10%減)の108万戸、中西部も同5.3%減(同7.5%減)の124万戸となった。一方、北東部は同1.5%増(同9.3%減)の68万戸と増加に転じている。

 住宅販売の減少の最大の理由は住宅ローン金利の急上昇と住宅価格の上昇が続いていることだ。5月の住宅価格(中央値)は前月比3.1%上昇の40万7600ドルと、4カ月連続で上昇。1980年代の統計開始以降、初めて40万ドル台に乗り、過去最高値を更新した。前年比は14.8%上昇となり、123カ月連続で前年水準を上回っている。主力の一戸建ても同様で、5月は前年水準より14.6%高い41万4200ドル(前月比3.1%上昇)となった。在庫不足を反映し、不動産仲介業者が中古住宅の買取り価格を競り上げていることが住宅価格高騰の要因にもなっている。

 住宅価格が低下しないもう一つの要因として、格安なフォークロージャー(住宅不動産の差し押さえ=競売)物件やショートセールズ(フォークロージャー手続きに進む前の早い段階で債務者と債権者が協議して住宅を任意売却)物件などのディストレスト物件の供給が相変わらず細っていることがある。5月のディストレスト物件の販売比率は1%弱と、4月から変わっていない。

 一方、手ごろな価格帯の住宅供給不足と高水準の住宅価格を反映し、5月の新規住宅取得者の比率は27%と、4月の28%や1年前の31%、過去平均の40%を下回り、低水準となっている。

 市場では、今後、FRB(連邦準備制度理事会)の利上げ継続により、すでに13年ぶりの高水準にある住宅ローン金利がさらに上昇する見通しや、在庫不足による住宅価格の高騰により、住宅購入者のアフォーダビリティが低下し、住宅販売が鈍化するとみている。

<関連銘柄>

 NASD投信<1545.T>、NYダウ投信<1546.T>、上場米国<1547.T>、

 SPD500<1557.T>、NYダウ<1679.T>、NYダウブル<2040.T>、

 NYダウベア<2041.T>

提供:モーニングスター社

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