米5月新築住宅販売件数、前月比10.7%増の69.6万戸―市場予想上回る

経済

2022/6/27 9:06

<チェックポイント>

●住宅ローン金利の一時的な低下が一因か―今後の改定など見極め必要

●手ごろ物件の販売が伸びる―高額物件の販売は鈍化

●今後は住宅ローン金利急上昇が懸念材料に

 米商務省が24日発表した5月の新築住宅販売件数(季節調整済み)は、前月比10.7%増の年率換算69万6000戸と、4月の10.5%減(改定前は16.6%減)から5カ月ぶりに増加に転じ、3月の71万5000戸以来2カ月ぶりの高水準となった。市場予想の59万5000戸も大幅に上回った。

 前年比では5.9%減と、12カ月連続で前年水準を下回った。コロナ禍前の20年1月の75万6000戸や21年全体の販売件数(前年比6.2%減の77万1000戸)も下回った。

 市場では、5月の販売件数が伸びたことについて、5月に住宅ローン金利が一時的に低下したことが一因とみている。また、新築住宅統計はサンプル数が少ないため、月によって変動が大きく、今回の販売件数も今後の修正等を見極める必要があるとの見方もある。

 実際、4月は前回発表時の59万1000戸から62万9000戸、3月は70万9000戸から71万5000戸、2月は79万2000戸から79万戸となり、計4万2000戸の上方改定され、過去3カ月(2-4月)の販売件数は大幅に上方改定されている。

 5月販売件数の内訳は、着工前時点での販売件数(バックログ)が前月比14.5%増の19万戸と4カ月ぶりに増加。建築中の新築住宅の販売件数は同12%増の31万6000戸と5カ月ぶりに増加した。完成住宅の販売件数は同5%増の19万戸だった。

 5月の住宅価格は中央値(季節調整前)で、前月比1.3%下落の44万9000ドルと、3カ月ぶりに低下し、4月の過去最高値である45万4700ドルを下回ったが、前年比では15%上昇と高水準を維持している。

 販売価格帯を見ると、40万ドル以上の高額物件の販売比率が62%と、4月の66%から低下した一方で、40万ドル未満の手ごろ物件の比率は前月の35%から37%に上昇。より手ごろ価格の物件にシフトした。

 地域別販売件数は、全体の約60%を占め、販売件数が最も多い南部が前月比12.8%増の41万3000戸と、5カ月ぶりに急増したほか、南部に次いで多い西部も同39.3%増の20万2000戸と、5カ月ぶりに急増し、全体を押し上げた。北東部は同51.1%減の2万3000戸、中西部も同18.3%減の5万8000戸と、大きく落ち込んだ。

 住宅供給(在庫)をみると、5月の新築住宅在庫(着工前や建築中の住宅も含む。季節調整値)は前月比1.6%増の44万4000戸と、5カ月連続で増加。08年5月の45万1000戸以来約14年ぶりの高水準となった。これを販売ペースで計算した新築住宅の在庫水準は7.7カ月相当と、前月の8.3カ月相当から5カ月ぶりに低下したが、1年前の5.4カ月相当を大幅に上回った。

 ただ、住宅在庫のうち、すぐに販売できる完成戸数は在庫全体の8.3%と少なく、未着工件数も11万5000戸と全体の25.9%で、依然として供給不足感が強い。在庫全体では住宅バブル期の在庫水準である45万戸に迫ったが、フレディマックの最新調査によると、現在の住宅取得需要は依然強く、需要を満たすためには住宅供給は最大400万戸不足していると試算されている。

 市場では、今後の見通しについて、FRB(米連邦準備制度理事会)による積極的な利上げに伴う住宅ローン金利の急上昇が予想され、住宅購入者のアフォーダビリティ(住宅取得能力)が一段と低下するとの見方が広がっている。建築資材不足や労働者不足、建築コストの上昇により、手ごろな価格帯の住宅供給が困難となるなど、新築市場には逆風が吹き続けると見ている。

提供:モーニングスター社

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