<中原圭介の相場観>米6月CPIが今年最大のヤマ場に
現状、米国の景気後退は確定といっても差し支えない。今年1~3月期のGDP(国内総生産)は年率換算で1.6%の減少となったが、4~6月期もマイナス成長の可能性が極めて高いためだ。アトランタ連銀が重要な経済指標を発表するごとに随時更新している予測モデルの「GDPナウ」によれば、同期のGDPが前週末時点で2.1%減とマイナス幅が大きい。
確定的な米景気後退、その長さ・深さに関心
しかし、米国の投資家の視線は、既に7~9月期以降に向いているのも事実。要するに、景気後退なのかどうかに議論の余地は既になく、問題はその「長さ」や「深さ」に移っている。
それを推し量る材料が、13日に発表される予定の米6月CPI(消費者物価指数)の結果だ。結果は非常に読みづらいが、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は6月末に、「景気を犠牲にしてもインフレ退治を優先する」という趣旨の発言をしている。今年の大きなヤマ場となることは間違いない。
実は6月中~下旬の米国株は、トレンドを見る上での大きなフシ目に差し掛かっていた。NYダウの週足チャートが一目瞭然(りょうぜん)だが、直近安値はコロナ前の2020年2月の高値に迫り、長期トレンドでの攻防ラインに接近。ナスダック総合指数も同様だった。テクニカルでは、こうした下値支持ラインを防衛できないとかなり厳しい展開になるとみていたが、ひとまず一度は持ち直して見せた。
オーバーシュートは最終局面か
CPIの上昇率が市場予想(前年同月比8.8%<前月比1.1%>)を下回れば米国株は底打ち・上昇すると考える。一方、逆の場合は、いったん6月の安値を割り込む展開になる可能性もある。もっとも、その後は反転相場に移行するとみている。原油価格が調整したため8~9月発表のCPIの伸びは鈍化すると思われるためだ。
米国株は6月にコロナバブルの上昇分をほぼ帳消しにした。まだQT(量的金融引き締め)が始まったばかりの段階でそうなったのは、株式をはじめとする金融資産の処分がかなり前倒しで進んでいたのに加え、借金をして投資をしていた個人やファンドがいかに多かったかということを示唆している。
バブル後の調整の過程では、投資家の債務削減が進む中で正常な水準よりさらに下落することが多い。しかし、こうしたオーバーシュートに備える必要がある局面は最終段階に入ったとみてよいのではないだろうか。当然ながらそれは、日本株についても言えることだ。
(写真:123RF)
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