海外株式見通し=米国、香港
【米国株】下期入りで物色動向に変化?
12月を会計年度末とする企業や機関にとって7月は下期入りの節目に当たる。そこで相場の潮目も変化し始めたのだろうか。
ブルームバーグによると、米国の著名投資家キャシー・ウッド氏が率いる運用資産約92億ドルの旗艦ファンド「アーク・イノベーションETF」への1日の資金流入額が3億2300万ドルと、5月以来で最高となった。同ファンドは、「破壊的イノベーション」関連企業の株式銘柄への投資に特化し、利上げが逆風となりやすいグロース(成長)銘柄で構成するため年初来で約50%下落した。しかし、ウッド氏の主張によれば、米金融当局は既に「スイッチをインフレからデフレに切り替えている」とのことだ。
インフレの心配が薄まれば、同ETF(上場投資信託)に組み入れられているビデオ会議アプリのズーム・ビデオ・コミュニケーションズやEV(電気自動車)のテスラをはじめとするグロース銘柄の出番もおのずと到来すると考えられる。13日に6月のCPI(米消費者物価指数)の発表がある。クリーブランド連銀が公表するCPIの前年同月比リアルタイム推計値である「CPIナウ」では、エネルギーと食料品を除いたコアCPIおよびコアPCE(個人消費支出)が6月30日以降に伸び率減速の兆しを示し始めている。(画像クリックで拡大版にジャンプ)
同ETFと対照的なのがウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイ(BRK)の割安株中心の保有株式ポートフォリオだろう。バークシャーが今年1~3月以降に新規に買い付けたか、または買い増しした銘柄は参考にされよう。
【香港株】中国ゼロコロナ政策と新型コロナワクチンの行方
中国のゼロコロナ政策が世界経済への大きな懸念材料となっている。上海市によれば11日の新型コロナウイルスの新規感染者は59人と4日連続で50人を上回り、オミクロン派生型「BA.5」も検出された。12~14日には大規模検査が実施される予定だ。
また、マカオでは11日から1週間、事実上の都市封鎖に入り、地元経済を支えるカジノが全面的に営業停止となった。一部職種を除き、市民は自宅待機を余儀なくされている。それでも、中国の新規感染者数は今年2~3月のオミクロン変異株の感染拡大時と比較すると低水準にとどまっており、昨年までと異なり重症化リスクが高まらないことから経済再開にかじを切った諸外国との対策の違いが浮き彫りとなっている。
中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)、および中国医薬集団(シノファーム)製の国産ワクチンは死んだウイルスからつくる「不活性化ワクチン」であり、複数の研究でも独ビオンテックや米モデルナの「m(メッセンジャー)RNAワクチン」をはじめ、より効果の高いワクチンの追加接種での免疫補強が推奨されている。
これに対し、習近平政権は外国製のワクチンの導入を頑なに拒否している。中国の上海復星医薬集団(シャンハイ・フォサン・ファーマスーティカル)が独ビオンテックに出資し、ビオンテックが米ファイザーと共同開発したmRNAワクチンの大中華圏への販売権を取得したものの、監督当局は中国本土への認可を出していない。
一方、香港とマカオ地区では昨年1月からmRNAワクチンの販売が行われている。上海復星医薬集団は中国の民営コングロマリットの復星国際(フォサン・インターナショナル)の傘下企業であり、主に心血管系、消化器系、中枢神経系、抗感染症、抗癌(がん)・免疫治療の5分野の医薬品を製造している。2021年通期業績は、売上高が前期比29%増の388億元、営業利益が同23%増の46億元と堅調に推移した。
(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)
(写真:123RF)
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