海外株式見通し=米国、香港

【米国株】コモディティー関連押し目買い好機?

 19日発表の動画配信ネットフリックスの4~6月決算は、6月末の会員数(全世界)が3カ月前に対し減少したものの、減少幅は事前予想の半分未満にとどまった。さらに、9月末については6月末からの増加を見通したことで、株価は反転上昇の兆しを強めた。また、インフレのピークアウト期待によって10年国債利回りは22日に2.75%まで低下。先行して売られたグロース(成長)銘柄や大型ハイテク株が持ち直しやすい環境が整ってきた面がある。

 需要減速を背景とするインフレ・ピークアウト観測がある一方で、原油やガソリン、小麦などはロシアのウクライナ侵攻直後の急騰に対する調整局面との見方も少なくない。現に、中・長期のバリュー投資に定評がある投資家のウォーレン・バフェット氏は、7月に入っても石油・ガス大手オキシデンタル・ペトロリアムの株式買い増しを継続し、7日時点で同社への株式保有比率が18.7%に達した。コモディティー(商品)関連は押し目買いの時機かもしれない。

 中国のゼロコロナ政策も加わり、足元では大半のコモディティー相場が短期的な下落に見舞われる中で、EV(電気自動車)のリチウムイオン2次電池の正極材に不可欠なリチウムはほとんど値下がりしていない。高コストのコバルトなどを使わない正極材の普及によるEVの低価格化が進み、EVの販売台数は2025年までに現在の3倍以上に増えるという予測も浮上した。リチウム生産首位のアルベマールやグローバルXリチウム&バッテリーテクノロジーETFは注目されよう。"

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【香港株】LMEとコモディティーが堅調

 今年3月上旬、ウクライナ危機に伴い世界3位の生産量を占めるロシア産ニッケルの供給懸念から、英ロンドン金属取引所(LME)のニッケル価格が高騰した。3月8日に一時前日比2倍に急伸したため、LMEは売買を停止して約定を取り消す異例の対応を取った。価格高騰で損失が膨らんでいた中国のニッケル生産大手企業をはじめとする「売り方」は救済されることとなったものの、禁じ手ともいえるLMEの振る舞いには先物取引の存在意義にかかわるあしき前例として厳しい批判が集まった。

 LMEは12年に香港取引所に買収されている。約定取消の対応が中国当局の意向だったのではないかとの見方もあるが、株主構成上は上位5位までが香港特別行政区5.9%、JPモルガン・チェース5.4%、UBS銀行4.9%、シティグループ4.7%、ブラックロック4.6%と直接的な影響力の行使には限界がある。それでも、LMEの取引の中心である銅、アルミ、ニッケルともに世界消費の半分前後を中国が占めており、中国当局への配慮があっても不思議ではないという見方も一理あろう

 香港取引所の1~3月は、新型コロナウイルスの感染再拡大や米中対立などの地政学リスクが響き、営業収益が前年同期比21%減、純利益が同31%減に落ち込んだが、業績に占めるLMEとコモディティーのウエートも高まりつつある。1~3月には、LME市場の1日当たり平均売買枚数が前年同期比10%増の62万枚に伸び、前四半期比でも7%増加した。主にLME市場が担うコモディティーの営業収益も前年同期比4%の増収を確保した。

 銅、アルミ、ニッケルともに、昨年から今年1~3月にかけて脱炭素のクリーンエネルギーを志向したEVの生産・販売増の追い風を受けて取引が増加している。4~6月の相場下落局面ではヘッジ取引需要の動向が注目される。

(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)

(写真:123RF)

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