<新興国eye>格付機関大手S&P、カンボジアの不良債権比率上昇に懸念

新興国

2022/8/5 15:10

 国際的格付機関のスタンダード・アンド・プアーズ・グローバル・レーティング(S&P)は、世界銀行見通し(Global Banking Outlook)2022年年央版を発表しました。この中で、84カ国の分析結果を公表しています。

 カンボジアについては、ワクチン接種の成功による経済の早期再開もあって22年のGDP(国内総生産)成長率を6.3%と予測しています。ウクライナ危機の影響は限定的で、中長期的には世界でも最も高い成長率に復帰すると見ています。

 カンボジアの金融業界については、新型コロナ対策として導入された返済が困難な借入の条件変更(緩和)について、効果があったとする一方で、22年6月末でこの制度が終了したことから、今後不良債権比率が上昇してくる懸念があるとしています。21年末で条件変更された貸付の比率は全体の12.9%を占めており、このうち10-12.5%程度は返済困難な不良債権となると見られるとして、不良債権比率は22年末の2.5%程度から23年には3-4%程度にまで上昇する可能性があると見ています。

 リスクとしては、建設・不動産業への貸付の不良債権化をあげています。建設・不動産向けの貸付は拡大を続け、現在貸付全体の18%程度を占めています。中国などからの投資に支えられていた建設・不動産セクターは新型コロナの影響を厳しく受けて過剰供給状態にあり、不動産の実質価格は20年に9%、21年には13%下落したと見ています。建設・不動産セクターの不況やプロジェクトの破たんが金融業界に影響を与える可能性があり、金融業界にとって重要なリスクとなっていると指摘しています。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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提供:モーニングスター社

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