海外株式見通し=米国、香港

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2022/8/18 9:30

【米国株】警戒される景気冷え込み、アクティビストの動きに注目

 7月の雇用統計は非農業部門就業者数が前月比52.8万人増と6月改定値(39.8万人)から伸びが拡大し、失業率は前月比0.1ポイント改善の3.5%となった。また、平均時給は前年同月比5.2%増と伸びが6月(5.1%増)から加速するなど、堅調な雇用環境を示した。

 市場関係者の見通しでは、FRB(米連邦準備制度理事会)が次回9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で0.75ポイントの大幅利上げを実施する確率は約7割に上る。さらに、9月はFOMCだけでなく、FRBによるバランスシート縮小による量的引き締め(QT)の加速が実施される予定であることも重要だろう。FRBは6月初からQTを開始しており、計画によれば縮小の上限額は、財務省証券と政府機関債、住宅ローン担保証券(MBS)の合計で、当初は月475億ドル、9月からその2倍の月950億ドルとなる。

 毎年8月に開催されるジャクソンソールでの経済シンポジウムが今年は25~27日に行われる。パウエルFRB議長が利上げとQTについてどのような見方を示すのかが大変注目される。10日発表の7月CPI(消費者物価指数)の上昇率は、ガソリン価格下落を受けて前年同月比8.5%と6月(9.1%)から鈍化したものの、ジャクソンホールに向けて9月以降の利上げとQTのダブルパンチで景気冷え込みが一層警戒され、波乱相場となる懸念は軽視できないだろう。

 全体としては雇用市場が堅調であるものの、フィンテック(金融のIT化)企業を中心に人員削減に踏み切る企業が増え始めた。オンライン決済のペイパル・ホールディングスの株式20億ドルを取得したアクティビスト(物言う株主)のエリオット・インベストメント・サービスは、リストラによる経費削減加速を迫っているもようだ。業績不振に対して思い切った人員削減が逆に株価押し上げ要因になると期待される。経営への介入も視野に入れたアクティビストの役割への期待も高まろう。

【香港株】日本企業と関係深い中国大手食品メーカー2社

 「黒豆せんべい」や「味しらべ」などの米菓で知られる岩塚製菓(2221)は、世界最大の米菓メーカーにして中華圏最大の食品会社である台湾の中国旺旺集団(ワンワン・ホールディングス)に1983年から技術指導を行い、5%超の株式を保有している。岩塚製菓が保有する旺旺集団株式評価額は同社時価総額の2倍以上に上り、前3月期の同社の連結営業損益(3億円強の赤字)に対し、旺旺集団を含む受取配当金は15.6億円に上った。

 その旺旺集団は、62年設立当初は主に農産物・水産物の缶詰加工品の輸出を行っていたが、岩塚製菓と提携後に米菓市場で急成長。中国本土と台湾では「旺旺雪餅」「旺旺仙貝(せんべい)」「旺仔ミルク」「旺仔小饅頭(卵ボーロ)」などで広く知られ、カナダ、タイ、韓国をはじめとする世界56カ国に輸出。食品事業以外にもマスメディア、ホテル、医療、不動産事業、外食産業など多岐にわたる事業を中国本土・台湾で展開している。売上構成比は乳製品・飲料部門が54%、米菓事業が23%を占める。

 テレビCMを通じて広く日本人に親しまれている「サッポロ一番」や「カップスター」のブランドの即席麺(めん)の製造・販売を行っているサンヨー食品(非上場)は、台湾発祥の中国食品メーカーである康師傅控股(ティンイー)株式の33.43%の保有している。これは、康師傅を傘下に置く台湾の頂新国際集団と同じ持株比率である。

 康師傅は即席麺の世界需要の約4割を消費する中国で2021年の市場シェアの45.7%(ACニールセン調査)の首位。「高価格・プレミアム価格帯」では「紅焼牛肉麺」「香辣牛肉麺」などに注力し、「スーパープレミアム価格帯」市場では「湯大師」や「速達麺館」などのシリーズが知られる。売上構成比では、飲料部門が約6割、即席麺部門が約4割だ。

(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)

(写真:123RF)

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