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2022/8/25 9:30

【米国株】欧州発リスクに警戒、半導体不足緩和は追い風

 NYダウはこのほど、年初来高値から年初来安値までの下落幅の0.618倍戻しに当たる3万4163ドルを一時回復したものの、その後は上昇一服の展開だ。注意すべきは、19日の米長期金利上昇が欧州要因による点だろう。

 19日発表のドイツの7月生産者物価指数(PPI)は前年同月比37.2%、前月比で5.3%それぞれ上昇する記録的な伸びを示したほか、ロシアの国営天然ガス会社ガスプロムが欧州向けパイプライン「ノルドストリーム」での供給を31日から3日間停止する方針を打ち出した。これを受け、欧州債利回りが押し上げられた。

 ウクライナ情勢をめぐり、ロシアが併合を目指す東部ドネツク州の住民投票阻止のため、ウクライナは米国から供与されたハイマース(高機動ロケット砲システム)を使ってロシアの実効支配地に攻撃する動きを見せるなど戦局が変わり始めた。ロシアがウクライナ侵攻の位置付けを「特別軍事作戦」から「戦争」に変更すれば戦況が激化することが避けられないだろう。

 それに加え、冬場に向けて欧州のエネルギー危機顕在化のリスクが強く、秋以降は金融市場が思わぬ波乱に見舞われても不思議ではないようにも思われる。

 一方、個別銘柄に目を転じれば明るい見通しも出てきた。17日に2022年5~7月の決算を発表したネットワーク機器メーカー最大手のシスコシステムズは、半導体供給不足の緩和でより多くの注文に対応できているとし、自動車からスマートフォンに至るまであらゆるメーカーを悩ませた半導体不足が緩み始めたことを示した。

 半導体企業の設備投資拡大に伴う生産増、中国の都市封鎖による需要低迷に加え、供給網で川下の需要変動が川上に行くほど増幅される「ブルウィップ効果」も無視できないだろう。供給網における部品の供給不足で利益率が悪化した企業にとっては、業績を改善させる好機が訪れている可能性がある。

【香港株】熊本の味千ラーメン、火鍋のハイディラオ

 「熊本ラーメン」といえば、焦がしたり揚げたりしたニンニクのチップやマー油(ニンニクを揚げた油)と豚骨スープを組み合わせ、具材にはキクラゲが入っている点が特徴。日本でも全国的に根強い人気がある。味千(中国)控股は、熊本の重光産業から中国本土と香港での「味千ラーメン」の経営権を取得し、熊本ラーメンをチェーン展開している。昨年末の店舗数は中国本土で713店、香港で22店を誇る。

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 同社は今月10日に今年上期の決算に係る会社予想を取引所に提出。それによれば、純損益が前年同期の4970万元の黒字に対し、9000万~1.3億元の赤字に転落するほか、売上高が前年同期比33.1%減の6.77億元にとどまる見通し。中国政府のゼロコロナ政策が直撃した格好だ。(画像クリックで拡大版にジャンプ)

 その一方、前期末の現金および現金同等物が15.27億元であるのに対し、22日終値ベースの株式時価総額は7.71億元。また、株式時価総額に純有利子負債額(有利子負債額から現金や非事業性資産を控除)を加えた「企業価値(EV)」はマイナス2000万元と、企業の実体を反映していない。

 最近は日本でも中国の鍋料理である「火鍋」が、辛いだけでなくコクがある「ウマ辛」出汁(だし)の効いた「中国版しゃぶしゃぶ」として人気化している。海底捞国際控股(ハイディラオ・インターナショナル)は「海底捞」ブランドで火鍋料理レストランをチェーン展開。接客サービスに定評があり、昨年末時点の店舗数は1443店(うち中国本土が1329店)に上る。

 今月15日に同社が発表した今年1~6月の決算見通しはやはり厳しい内容だが、中国本土の事業は黒字を確保したとの見方があることに加え、会社側も本土と他地域ともに6月以降は前月比で収益が大幅に改善したとの認識を示している。7~12月の業績回復が期待される。

(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)

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