松屋R&D:後藤秀隆社長インタビュー=血圧計センサーのカフなど従来事業安定的に成長

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2022/8/31 9:00

 松屋アールアンドディ(=松屋R&D、7317)は縫製工程を自動化する独自技術に強みがあり、それを活用した事業を展開中。縫製自動機の開発・製造・販売のほか、血圧計センサーのカフ(腕帯)、カーシート、エアバッグなどの製造・販売が主力で、世界的に需要は大きい。さらに、これらの事業で安定的に売上・利益を伸ばしながら、積極的に新規事業に取り組み、長期的な成長戦略を進めている。同社の現状と将来のビジョンについて後藤秀隆社長に聞いた。

 ――今3月期の第1四半期決算は連結売上高14億3400万円(前年同期比0.8%増)、営業利益1億円(同9.8%減)でしたが、経常利益以下は過去最高でした。

 「上海のロックダウン(都市封鎖)、半導体供給不足の影響で血圧計カフの受注が低迷、自動車工場の稼働停止からカーシートの生産量も減少し、それが売上減につながりました。一方でエアバッグはその影響を受けず、縫製自動機関連でも大口での売上計上があったことから、全体の売上高は前年同期比で増加しました。また、経常利益は1億7500万円(同70.2%増)、純利益は1億1100万円(同50.5%増)と急増し、第1四半期としては過去最高を更新しました。円安・ドル高の進行を受け、保有する外貨建資産を第1四半期末の為替相場で評価し、営業外収益に計上したためです」

 ――通期予想については、売上高61億6600万円(前期比9.3%増)、営業利益4億1000万円(同15.5%増)で期初予想を据え置きました。

 「現在では上海のロックダウンは解除され、半導体不足の影響も徐々に解消に向かっています。加えて、エアバッグの新規取引における量産が開始され、インド向けレーザー裁断機など大口売上もあって、6月からは収益とも回復傾向にあります。自動機、血圧計カフ、カーシート、エアバッグなどの需要は大きく、既に受注を確保し、第2四半期は計画を若干上ブレした推移が続きそうです。足元の受注動向から、下期もかなりの受注が見込めるでしょう。ただ、新型コロナ動向、ウクライナ情勢に加えて、米国のインフレも懸念材料とみています」

新規事業を積極的に推進し成長加速目指す

 ――新規事業はどんな状況にありますか。

 「ポーランドのグローバル医療機器メーカーEGZOTech(EGZO)社と日本総代理店契約を締結し、EGZO社のEMG(表面筋電図)を利用した脳梗塞(こうそく)のリハビリ用ロボットおよび周辺機器の販売を行う計画を進めています。7月に薬品医療機器法の認証を取得し、今後、本格的な事業展開を進める予定です。大学病院、リハビリセンターなどから引き合いがあり、現在は販売要綱をまとめているところです。下期には販売を開始できるでしょう。将来的には自社でリハビリセンターの展開も視野に入れています」

 「また、オムロン(6645)と共同で、伸び縮みのある柔らかい素材の縫製を実現するよう、3D(3次元)画像処理付き縫製ロボットの開発を行い、既に1stフェイズが完了しました。今後は実用化に向けて新たな段階に入っています。スマートファクトリーの構築を目指し、大手自動車部品メーカーとも開発に向けて協議を開始しました。オムロングループのオムロンヘルスケアとは資本・業務提携を強化し、カフの新規開発や製造の品質向上・コストダウンを目指しています。一方、ドローン関連事業についてはこれまでの動きを大きく見直し、今後、まったく新しい取り組みを始める計画です」

 ――海外展開について教えてください。

 「ポーランドを拠点に、ルーマニア、チュニジアなどに展開し、メキシコ、インドにも進出しています。近年、効率化、無人化のニーズはより大きくなっており、事業開拓の余地は大きいでしょう。これまで新型コロナウイルスで思うような営業活動ができませんでしたが、今後は人材への投資を行い、対面の営業を積極的に展開し、事業拡大を目指します」

 「ベトナムでは新規の土地を購入し、従来の5工場をすべて集約した新工場を建設します。従来、工場の土地、建物ともレンタルでしたが、自社工場を保有することで、固定資産の減価償却費や借入の金利を加味しても1億円以上のコスト削減が見込めます。また、現状の第1工場から第5工場も有効活用し、新たな事業展開を行ってまいります。さらに、ベトナムでは今後も経済発展が見込めるため、海外企業の投資が活発化しており、事業用地不足になっています。今後もベトナムでの生産委託は増えてくる見込みであり、大きなビジネスチャンスだと思っています」

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