海外株式見通し=米国、香港
【米国株】浮上するペット関連株
世界各国・地域の中央銀行は高インフレとの闘いを宣言し、利上げ競争を繰り広げようとしている。しかし、その中でもFRB(米連邦準備制度理事会)とECB(欧州中央銀行)には高い壁が立ちはだかることには注意が必要だ。
FRBへのハードルは基軸通貨に伴う制約条件だ。FRBの金融引き締めにより世界各国は米ドル建て債務利払い費がかさんだり、資金調達がより困難になったりする状況に陥ることとなり、中には通貨危機・債務危機のリスクが高まる国・地域が出ても不思議ではない。次に、ECBの前途には、相対的に財政のぜい弱な国の国債利回りが急上昇する「市場分断」のリスクが横たわる。
1日にイタリアの10年国債利回りが6月以降で初めて一時4%を上回り、ドイツとイタリアの10年債利回り格差が2.43ポイントまで拡大した。イタリアは総選挙を25日に控え、同国の財政のぜい弱性に焦点が当たりやすい面があるもよう。FRBもECBもインフレ抑制のための超タカ派スタンスが持続的なものとはなりにくい点は重要だ。
主要中央銀行による相次ぐ金融引き締めに伴う景気後退リスク、およびインフレによる消費者の購買力減退、企業のコスト上昇への抵抗力がある銘柄の物色が求められる局面と言える。そのような要望に応えられる、「究極のディフェンシブ」ととらえられる可能性がある候補としては、ペット関連銘柄が挙げられる。
最近はペットを「より密接な関係を人間と持つ動物」として「コンパニオン・アニマル(伴侶動物)」と呼ぶ風潮もあり、消費者の財布のひもが固くなる中でも関連製品・サービスの高付加価値化が加速している。何より、飼い主がペットに対してブランド変更を強要できるとは考えにくく、企業はペット関連市場でいったんシェアを握れば、経済環境のいかんにかかわらず成長が可能となるような強力な参入障壁を築くこともあり得る。アニマルヘルス関連のゾエティス(ZTS)、ペット関連製品ECのチューイ(CHWY)などが注目される。
【香港株】低リスク・バリューで注目の2銘柄
ハンセン指数構成銘柄のうち、相対的に株価変動姓が小さいバリュー銘柄として、長江実業集団(CKアセット・ホールディングス)と中国中信(シティック)の2銘柄が挙げられる。ハンセン指数に対する6日時点のベータ値(市場全体が増減したときに個々の資産がどのように動くかを示す尺度)で見ると、いずれも1を大きく下回ることから指数の変化に対する感応度が低く、低リスクであることが示されている。
長江実業集団は、中国・香港を本拠とする香港最大の企業グループの長江実業グループにおける不動産・公共会社であり、香港・中国本土・海外での不動産開発・投資やREIT(上場不動産投信)、ホテル経営を手掛ける。英CK Williamなど合弁会社を通じて欧米豪などでインフラ・公共事業も展開。2022年1~6月は、営業収益が前年同期比54%増の357.15億香港ドル、純利益が同54%増の130.77億香港ドル。
足元では、PERが8.67倍、株価純資産倍率(PBR)が0.54倍、配当利回りが4.00%とバリュー銘柄としての本領を発揮している。同社は、経営再建中の中国恒大集団が香港本部ビルにある中国恒大中心を売りに出した際に入札に参加しており、動向が注目される。
中国中信は、国務院直属の中国中信集団(CITIC)の傘下で中国政府系の投資持株会社。14年にCITICからの資産注入を受けて金融、製造、不動産、自動車、食品含む消費など広範な事業部門を擁する中国最大級のコングロマリットに転身した。第2位株主で20%保有の正大光明投資は伊藤忠商事(8001)とタイ財閥チャロン・ポカパン(CP)グループの合弁会社だ。
22年1~6月は、営業収益が前年同期比12.8%増の5125.89億香港ドル、純利益が同13.3%増の500.51億香港ドル。足元ではPERが3.04倍、PBRが0.31倍、配当利回りが8.25%と、割安バリュー銘柄として位置付けらるだろう。
※右の画像クリックでグラフ拡大
(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)
(写真:123RF)
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