<新興国eye>ロシア中銀、予想通り0.5ポイント利下げ―次回会合で利下げ一時停止の可能性

新興国

2022/9/20 9:40

 ロシア中央銀行は先週末(16日)の金融政策理事会で、景気を支援するため、主要政策金利である資金供給のための1週間物入札レポ金利と資金吸収のための1週間物入札預金金利をいずれも0.5ポイント引き下げ、7.5%とすることを決めた。市場の予想通りだった。

 中銀はロシア・ウクライナ戦争の勃発(2月24日)と、それに伴う西側の対ロ経済制裁により、インフレ圧力が一段と高まったことや、ルーブルが一時30%も急落したことを受け、2月28日の臨時会合で、主要政策金利を9.5%から一気に20%に引き上げた。また、同時に資本流出規制や株式市場の閉鎖など緊急対策も講じた。

 しかし、4月8日の臨時会合から景気を支援するため、3ポイントの大幅利下げを決めて利下げサイクルに転換。その後、同29日と5月26日の会合でも3会合連続で同率利下げ、6月と前回7月会合でも同率(1.5ポイント)利下げを決めている。今回の会合では利下げ幅を前回の3分の1の0.5ポイントに抑えた。この結果、4月以降の利下げ幅が計12.5ポイントに達し、ウクライナ戦争開始後の緊急利下げ分(10.5ポイント)を大きく上回った。金利水準は21年12月(7.5%)以来の低水準。

 中銀は会合後に発表した声明文で、追加利下げを決めたことについて、前回会合時と同様、「ロシア経済の外部環境は依然として困難で、経済活動を著しく制約している」とし、景気を支援する必要性があるとの認識を示した。ただ、中銀は、「家計と企業のインフレ期待は依然として高止まりしている」とし、利下げ幅を0.5ポイントの小幅に抑えている。

 今後の金融政策について、中銀は前回会合時と同様、「金融政策決定は、物価目標に対するインフレとインフレ期待、ロシア経済の変革の動向、さらには国内外の状況や金融市場の反応によってもたらされるリスクを考慮する」とした。

 しかし、中銀は、「金融環境は引き続き緩和しており、全体としてニュートラル(インフレ圧力を高めることなく安定成長を可能にする短期金利の水準)になっている」、また、「短期的には、インフレの上振れと下振れの両リスクはバランスが取れている」としており、市場では次回10月会合で利下げの一時停止など金融政策で柔軟性を示す可能性があるとみている。

 ただ、その一方で、中銀は、前開会合時に使った、「経済とインフレの動きは財政政策の決定に大きく依存している。財政赤字が拡大した場合、インフレを24年に物価目標(4%上昇)に戻し、それを4%上昇近くに保つためには、金融引き締めが必要になる可能性がある」との文言を残しており、インフレリスクを慎重に見極めたい考えだ。

 8月のインフレ率は前年比14.3上昇と、7月の同15.1%上昇を下回り、6月の同15.9%上昇や5月の同17.1%上昇、4月の同17.8%上昇から連続して減速。直近の9月9日時点のインフレ率も同14.1%上昇と、低下傾向を維持している。

 中銀はインフレの現状認識について、「現在のCPI(消費者物価指数)の上昇率は依然として低く、インフレ率はさらに低下している」とし、また、「抑制された消費需要や国内外の輸出制限で国内で供給が増えたことによる追加のディスインフレ(物価上昇率の低下)要因が見られる」としている。

 インフレ見通しについては、中銀は、「中銀予測では、金融政策のスタンスを考えると、インフレ率は22年に11-13%上昇(前回会合時は12-15%上昇)、23年は5-7%上昇(同5-7%上昇)に低下。24年には物価目標の4%上昇に戻る」とし、22年のインフレ見通しを改善方向に修正した上で、23年と24年の見通しを据え置いた。

 また、景気見通しについては、中銀は、「22年GDP伸び率見通しを4-6%減のレンジの上限(4%減)に近付く可能性がある」とし、7月会合時点の4-6%減から改善方向に修正した。23年のGDP伸び率については前年の伸びが高かったため、低めの数値が出る、いわゆるベース効果や生産減少によって1-4%減、24年は1.5-2.5%増になると予想している。

 次回の定例会合は10月28日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 RTS連動<1324.T>、WTI原油<1671.T>、ガス<1689.T>、

 原油<1690.T>、野村原油<1699.T>

提供:モーニングスター社

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