エージーピー、業績回復進む――航空業界のCO2削減商機に

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2022/9/22 8:50

 空港で航空機に電力を供給するエージーピー(9377)は、リオープン(経済活動再開)に伴う業績改善とともに株価が堅調に上昇している。今3月期は連結営業利益が前期比2倍の2.5億円に拡大する見通し。航空業界が取り組むCO2(二酸化炭素)排出削減の動きも商機になっている。

リオープンで動力供給上向く

 同社は駐機中の航空機にGPU(地上動力設備)で電力や空調を供給する「動力供給事業」、空港施設の整備や保守などを展開する「エンジニアリング事業」が収益の2本柱。さらに、航空機の地上支援機材(GSE)や病院、介護・福祉施設向けのフードカート、電力を販売する「商品販売事業」も手掛けている。

 新型コロナウイルスの感染拡大で落ち込んだ収益は、行動制限の緩和によって回復色を強めている。営業損益は前期に1.2億円の黒字(前々期は1.3億円の赤字)に浮上した。航空旅客数が持ち直しGPUの需要が戻ったことが背景にある。

 今期第1四半期は、売上高が24.7億円(前年同期比12%増)、営業損益が0.6億円の赤字(前年同期は1.1億円の赤字)となった。動力供給事業の増収に加え、空港内のエンジニアリング事業も特殊機械設備の保守業務が伸びた。純損益は固定資産除却損などで前年同期から赤字幅が拡大したものの、本業が上向く状況を維持している。

 エンジニアリング事業の売上高は、整備保守が前年同期比で16%増加したほか、物流保守サービスも同26%増と好調に推移した。「過度に空港に依存しないリスク回避の観点から力を入れてきた」(大貫哲也社長)という通り、技術者の派遣を積極化した。

 下期偏重の事業構造により第1四半期の営業損益は赤字にとどまったものの、コスト抑制も奏功し、社内計画に対しては0.8億円程度の改善を果たした。また、動力供給事業の部門損益は黒字化している(0.3億円の黒字、前年同期は0.6億円の赤字)。

株主還元強化、流通株式比率引き上げも

 中期経営計画では、最終年度の2026年3月期に連結売上高150億円以上(今期計画は111億円、前期比8%増)、営業利益率10%(営業利益15億円)以上を目指す。既存事業では、GPUの利用率100%を大目標に掲げている。

 GPUは航空燃料の節約や、APUと比べてCO2排出量を10分の1に抑えられるなどの利点があり、同社は固定式に関しては国内の主要空港で独壇場を築いている。直近では出資先のSASJ社が、電力と空調を同時に供給できる小型車両(COMBO)について、那覇空港で日本エアコミューター社のプロペラ機向けのサービスも開始した。小型機への動力供給は地方空港の展開に欠かせない。またエージーピーは、環境負荷がより低い、国産初のバッテリー駆動式GPUのプロトタイプの開発にも成功している。

 空港以外の領域についても、物流保守サービスを中心に伸ばしていく考え。空港内で培ったノウハウを物流センターに活用し、EC(=Eコマース、電子商取引)市場の成長を取り込む。このほか、株主還元は今期に年間10円の配当(前期は5円)を計画する。中計期間の4年の総還元性向100%超を視野に、自社株買いにも注力する。

 スタンダード市場への上場継続へ向けては、流通株式比率の引き上げが課題になっている。これに対し同社は、「上位3事業法人との間で、当社株式の保有比率を低減してもらえるよう協議している」(大貫社長)。純投資目的の投資家の評価向上を狙い、成長投資と還元の両立を図る方針だ。

(写真:123RF)

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