<新興国eye>ブラジル中銀、政策金利を賛成多数で据え置き―現状維持の継続を示唆

新興国

2022/9/22 9:41

 ブラジル中央銀行は21日の金融政策決定委員会で、政策金利(セリック)である翌日物金利誘導目標を現行の13.75%に据え置くことを賛成多数で決めた。2委員が0.25ポイントの追加利上げを主張した。据え置きは市場の予想通りだった。

 中銀はインフレの急加速を受け、21年3月会合で15年7月以来、5年8カ月ぶりに利上げに転換。5月と6月は各0.75ポイント、8月は1ポイント、10月と12月は各1.5ポイントの大幅利上げを実施。2月会合でも同率の大幅引き上げを決めたが、3月と5月の会合で上げ幅を1ポイント、6月と前回8月会合で半分の0.5ポイントに縮めた。しかし、これまでの利上げが12会合連続で、昨年3月以降の利上げ幅は計11.75ポイントに達したことを受け、現状維持に転換した。それでも政策金利は16年12月(13.75%)以来5年8カ月ぶりの高水準となっている。

 中銀は会合後に発表した声明文で、現状維持に転換したことについて、「インフレ見通しに対するリスクは上ブレ・下ブレの両リスクがある。コモディティー(国際相場商品)相場のさらなる下落、また、世界景気の予想以上の減速、(ガソリンや電気料金などに対する)減税の継続により、インフレ率が低下するリスクがある一方で、世界的なインフレ圧力上昇の長期化や将来の財政見通しと総需要を支える追加財政刺激策の不確実性によるインフレ上振れリスクがある」とした上で、「インフレリスクを考慮する際、依然として不確実で不安定な現在のシナリオには沈着冷静さが必要だ」とし、インフレリスクを見極めるため、現状維持を決めたとしている。市場ではインフレ急加速の最悪期は過ぎたことから、中銀はこれまでの利上げによる需要低下の効果を見守るとしている。

 8月のインフレ率は全体指数で前年比8.73%上昇と、7月の同10.07%上昇や6月の同11.89%上昇、5月の同11.73%上昇から減速傾向にある。特に、7月と8月はガソリンや電気料金などに対する減税により、インフレが急速に低下している。

 また、中銀が現状維持に転換する方針を示した背景にはインフレ率が23年から低下するとの見通しがある。中銀は声明文で、インフレ見通しについて、「22年のインフレ率を5.8%上昇(前回会合時は6.8%上昇)、23年を4.6%上昇(同4.6%上昇)、24年を2.8%上昇(同2.7%上昇)と予想している」とし、24年には中銀の今年と来年の物価目標(それぞれ3.5%上昇と3.25%上昇)に収束すると予想している。

 今後の金融政策について、中銀は前回会合時と同様、「政策金利を十分に長期間維持する戦略がインフレの収束を確保する上で十分かどうかを考慮しながら、引き続き警戒を続ける」とし、当分の間、現状維持を続けたい考えを示した。また、中銀は、「ディスインフレ(物価上昇率の低下)のプロセスが定着し、インフレ期待が物価目標付近で抑制されるまで、現状維持を続ける」としている。

 ただ、中銀は、「将来の金融政策は調整可能であり、ディスインフレプロセスが期待通りに進まない場合、金融引き締め(利上げ)サイクルの再開を躊躇しない」としている。

 次回の金融政策決定会合は10月25-26日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 ボベスパ<1325.T>、上場MSエマ<1681.T>、上場EM債<1566.T>

提供:モーニングスター社

関連記事

マーケット情報

▲ページTOPへ