<新興国eye>トルコ中銀、予想に反し1.00ポイント追加利下げ―年内まで利下げ継続の可能性

新興国

2022/9/26 10:38

 トルコ中央銀行は先週(22日)の金融政策決定会合で、景気を支援するため、主要政策金利である1週間物レポ金利を1.00ポイント引き下げ、12.00%とすることを決めた。市場は現状維持を予想していたため、サプライズとなった。

 中銀の金融政策に影響力を持っているエルドアン大統領は景気支援を優先させる低金利政策の方針を維持しているため、市場では今回の中銀の予想外の利下げ決定により、リラ安とインフレ上昇に歯止めがかからず、インフレ率は今後数カ月、上昇し続けると見ている。

 同国の8月のインフレ率は前年比80.21%上昇と、7月の同79.60%上昇や6月の同78.62%上昇を上回り、98年以来24年ぶりの高い伸びが続いている。中銀が7月28日に発表した最新の四半期インフレ報告書では、22年末時点のインフレ見通しは60.4%上昇、23年末時点の見通しは19.2%上昇、24年末時点も8.8%上昇と予想しているが、インフレ率(全体指数)は今秋に前年比約90%上昇でピークに達すると見ている。

 中銀はコロナ禍からの景気回復に伴う急激なインフレ上昇を抑制するため、20年9月から利上げサイクルに入り、利上げ幅が20年だけで計10.75ポイントに達したため、利上げが行き過ぎたとして、21年9月に利下げに転換。同12月まで5会合連続で利下げしたが、今度はリラ安が進行。それにより、インフレが急加速したため、今年1月から据え置きに転じた。しかし、前回8月会合で市場の据え置き予想に反し、利下げに転換。これで2会合連続の利下げとなり、利下げ幅は2ポイントに達した。

 中銀は会合後に発表した声明文で、追加利下げを決めたことについて、前回会合時と同様、「トルコの第3四半期の経済指標は、外需の減少により、経済活動の勢いがやや失われていることを示している」とした上で、「世界経済成長の不確実性が高まり、地政学的リスクが高まっている時期に、鉱工業生産の成長の勢いと雇用を維持するため、金融緩和の状況が重要だ」とし、利下げを決めたとしている。

 また、中銀は前回会合時と同様、「エネルギー価格の高騰と主要貿易相手国の景気後退の可能性により、(輸出減少に伴う)経常収支の悪化リスクがある。持続的な経常収支は物価安定にとって重要」とし、通貨トルコリラ安による輸出競争力の維持の必要性も指摘している。

 インフレ見通しについては、中銀は、前回会合時と同様、「インフレ上昇は、(ウクライナ戦争など)地政学的な動向を反映した、世界的なエネルギーや食料、農産物の価格上昇による強い供給ショックによって引き起こされている」とし、インフレ加速は国内需要の拡大よりも供給サイドに原因があるとの見方を維持。利上げによる需要抑制、それに伴うインフレ抑制の必要性がないことを改めて強調。

 その上で、中銀は、「進行中の地域紛争の解決とともに、持続可能な価格と金融の安定を強化するために講じられ、断固として実施された措置により、ディスインフレのプロセス(インフレの低下基調)が始まる」とし、インフレ減速の見通しに自信を見せている。

 また、中銀は今後の金融政策について、前回会合時と同様、「経済指標がインフレの恒久的な低下(減速)を示し、中期的な5%上昇の物価目標が達成されるまで、(通貨トルコリラの急落を阻止する)リラリゼーション戦略に基づいて、利用可能なあらゆる金融政策ツールを使い続ける」とし、欧米各国の利上げスタンスとは一線を画す考えを改めて強調している。リラリゼーション戦略とは金融システムでのトルコリラの利用拡大により、インフレ加速要因となるトルコリラ安を阻止し、物価安定を目指すという戦略。

 しかし、今回の利下げを受け、すでに記録的な急落を見せているトルコリラは対ドルで0.2%下落。むしろ、インフレ加速懸念が高まっている。市場では中銀は当面、インフレ阻止よりも景気支援に政策の重点を置くと見ており、少なくとも年内まで利下げが続き、23年の総選挙までのあと1年余りは低金利が維持されると予想している。

 次回の金融政策決定会合は10月20日に開かれる予定。

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 上場MSエマ<1681.T>

提供:モーニングスター社

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