【為替本日の注目点】英ポンド変動相場制移行後最安値に

ドル円は続伸。米長期金利が上昇したことや、対ドルでユーロやポンドが売られたことで円もつれ安に。144円79銭までドル高が進み、高値圏で引ける。ユーロドルは続落。独ifo期待指数の悪化が続き、ユーロは0.9599まで下落。ポンドが急落。トラス政権が表明した財政政策と追加減税がインフレを加速させるとの懸念が広がり、ポンドドルはアジア時間に1.0360近辺まで売られる。株式市場は大幅に続落。ダウは329ドル下げ、S&P500は5日続落。債券は反落。長期金利は2010年4月以来となる3.93%台まで上昇する場面も。金は大幅に続落し、原油も2ドルを超える下げに。
マーケット情報
ドル/円 143.80 ~ 144.79
ユーロ/ドル 0.9599 ~ 0.9689
ユーロ/円 138.85 ~ 139.52
NYダウ -329.60 → 29,260.81ドル
GOLD -22.20 → 1,633.40ドル
WTI -2.03 → 76.71ドル
米10年国債 +0.024 → 3.924%
本日の注目イベント
中 8月工業利益
欧 ユーロ圏8月マネーサプライ
米 8月耐久財受注
米 7月FHFA住宅価格指数
米 7月ケース・シラ-住宅価格指数
米 9月リッチモンド連銀製造業景況指数
米 9月コンファレンスボード消費者信頼感指数
米 8月新築住宅販売件数
米 エバンス・シカゴ連銀総裁講演
米 パウエル・FRB議長、パネル討論会に参加
米 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、質疑応答に参加
予想通り、FOMCメンバーのタカ派発言が相次ぎ、FRBはインフレを抑制するため当面は大幅利上げを継続せざるを得ないとの観測が広がり、金融、商品市場では混乱が続いています。
債券市場では債券が売られ、米長期金利は2010年4月以来となる3.93%台まで上昇しました。米金利との相関が強いドル円は金利上昇を手掛かりに、「介入警戒感」がありながらも、144円79銭までドル高が進みました。先週木曜日の市場介入で5円以上もドル円は押し戻されましたが、その値幅の8割程度を回復したことになります。もっともドル円が上昇した背景には、ユーロやポンドなど、欧州通貨が対ドルで軒並み安値を記録したことで、「つれ安」した面もあります。特にポンドドルは、昨日の朝方のアジア市場で大きく売られ、一時は1.0360前後までポンド安が進みました。この水準は1973年に変動相場制に移行して以来の安値を記録したことになります。昨日のこの動きは「フラッシュ・クラッシュ」の可能性もあり、バンク・オブ・イングランド(BOE)は緊急声明を発表しましたが、ポンドの戻りは限定的となっています。トラス政権が表明した財政政策と追加減税がインフレを加速させ、借り入れを増大させるとの懸念が広がっています。ユーロドルも連日安値を更新しており、昨日のNYでは0.9599まで売られています。独ifo期待指数の悪化が続いていることと、25日のイタリアの上下院の総選挙で、野党の「イタリアの同胞」が第1党に躍進したことで、同国の政治的リスクが高まりユーロ売りにつながっています。
株式市場ではダウが連日大きく値を下げ、昨日も329ドル安で引けています。今年1月に記録した3万6799ドルからはすでに7500ドル(約20.49%)以上も下げています。投資家の多くは、まさにパウエル議長の言った「さらなる痛み」を感じていることでしょう。商品市場でもWTI原油価格は売られ、一時は76ドル台半ばまで下げ、金も1628ドル台まで下げる場面がありました。いずれもFRBがインフレ抑制のため今後も大幅な利上げを継続するとの見方が影響しています。「ブラックアウト」明けで、多くのFOMCメンバーの講演などが予定されていますが、メンバーの中ではほぼインフレ阻止に向って意志統一が出来ていると思われます。従って、予想される発言もタカ派寄りになる可能性が高いことを、昨日のコメントに残しました。
クリーブランド連銀のメスター総裁は、「根強い高インフレを退治するために追加の利上げが必要だ」と述べ、「インフレ期待の抑制が効かなくなるのを防ぐには、引き締めより長期間維持すべきだ」との認識を示し、ボストン連銀のコリンズ総裁は就任後初となる講演で、「インフレを目標に回帰させるには、金融政策のさらなる引き締めが必要だ。最近のFOMCの予測でもそれは示されている」と指摘し、「インフレが鈍化しているという明確かつ説得力ある兆候を目にすることが重要だ」と述べています。また、アトランタ連銀のポスティック総裁も、「米経済が最も良く機能するのは、経済の先行きや短期および中期の軌道に対する信頼がある時で、高インフレはそれを損なう。従って金融当局がすべきことは、インフレをもっと抑制することだ」と語っています。このように、FOMCメンバーである地区連銀総裁は今後の利上げには前向きというか、さらに積極的な利上げも辞さないといった姿勢を見せていました。一方でFOMCメンバーではありませんが、急激な利上げを懸念する声もあります。ペンシルベニア大学ウォートン校のシーゲル教授はCNBCとのインタビューで、「米金融当局は、過度に強固かつタイトな姿勢をあまりにも長期にわたって続ける可能性が高い」とした上で、「フォワードルッキングな実際のインフレ率を踏まえれば、FF金利先物はタイト過ぎる」と述べています。さらに教授はインフレに関して、「中身のない話を続けるより、リセッションのリスクの方がはるかに高い」と論じていました。(ブルームバーグ)
先週、政府日銀は市場介入に踏み切りましたが、その介入規模がほぼ明らかになっています。ドル売り円買い介入を行ったことで、スポット取引の決済日は本日になりますが、26日に発表された当座預金残高の推計から「3兆円規模の円買いドル売り」を行った模様です。今回の介入は円を買うことから、市場から円を吸い上げることにつながり、基本的には短期金利の上昇要因となります。黒田総裁は今回の介入について「金融政策と為替政策は目的や効果が異なり、矛盾するとは思わない」と述べ、「(年明け以降に)2%を割ることは確実だと思っており、賃金の上昇を伴った2%の物価上昇が来年実現されるとはみていない」と語っています。(日経新聞)
本日のドル円は145円台に乗せることが出来るかどうかですが、昨日のNYではドル高が進みながらも同水準をテストするには至っていません。東京時間では当然介入警戒感もあります。今後ドルがさらに上昇するとしても、一旦利益が出るポジションを手放す水準を探るスタンスでいいのではないでしょうか。レンジは143円~145円50銭程度とみています。
(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(写真:123RF)
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