海外株式見通し=米国、香港
【米国株】指数連動ETF活用の「ポータブル・アルファ」戦略
今年7月以降、日本でも米国株の信用取引が解禁された。解禁に当たっては日本証券業協会がルールを整備。現時点で取り扱う証券会社はまだ一部に限られるものの、今後の米国株投資のあり方を大きく変える可能性が高い。
現在は景気が拡大し過ぎたことで起きたインフレを抑制し、物価安定のため金融引締めを強化する「逆金融相場」の時期であり、今後は景気後退と企業業績の悪化による「逆業績相場」への移行が懸念される。それに加え、ウクライナ情勢においてロシアが国際社会の反対を押し切って東南部4州を併合するに至り、高金利が長期化するリスクを高めている点も無視できないだろう。
個別銘柄のリターン(収益)の源泉を説明する際に「アルファ」と「ベータ」という言葉がよく用いられる。ベータはマーケットを代表する指数(インデックス)などのベンチマークに連動するリターンであるのに対し、アルファはベンチマークを超過する個別銘柄のパフォーマンスに当たる。要するに、個別銘柄のリターンはアルファとベータの合計ということになる。
そこで、個別銘柄のリターンのうち、市場連動部分(ベータ)を指数の売り建てによって取り除き、アルファ部分だけを取り出そうという投資戦略が注目される。このような投資戦略は「持ち運びができる」ということで「ポータブル・アルファ」戦略と呼ばれている。
例えば、S&P500連動のバンガードS&P500ETF(VOO)やナスクダック100連動のインベスコQQQトラストシリーズ1(QQQ)の新規売り建てに対し、主要株価指数を上回るパフォーマンスを上げやすいと考えられる銘柄の買いによって積極的にアルファの獲得を目指すことは、今後の米国株投資で必要性の高いスキル・ノウハウだと考えられる。
【香港株】米中の長期金利逆転、カジノ・旅行代理店株が上昇
中国の10年国債利回りは、2020年12月ごろの3.3%台から緩やかな低下基調をたどり、今年9月末に2.75%まで下がった。これに対し、米10年国債利回りは20年12月ごろに0.8%台だった水準が、FRB(米連邦準備制度理事会)が政策金利を引き上げたことをきっかけに直近では4%超まで上昇した。
このような利回り格差の動向を反映し、米ドル・人民元相場も今年3月の1ドル=6.3元台から急激にドル高・人民元安が進行。9月末に7.1元台まで人民元安が進んだ。人民元安を反映し、中国の外貨準備高も昨年12月をピークとして減少傾向にあり、当局も国外への資金流出に敏感とならざるを得ない面が強くなってきている。(画像クリックで拡大版にジャンプ)
中国本土では、海外からの入国者に対してホテルでの7日間の隔離に加え、3日間の自宅などでの健康観察の義務付けがいまだに残る。その一方、9月26日からは香港入境者へのホテル隔離が廃止され、マカオでは10月末か11月初旬に中国からの団体旅行客の受け入れが再開される方針となった。
マカオへのツアー再開は20年の新型コロナウイルスの流行後で初めてとなる。香港ハンセン指数構成銘柄の年初来騰落率でも、銀河娯楽(ギャラクシー・エンターテイメント)や金沙中国(サンズ・チャイナ)といったカジノ株、携程旅行網(トリップドットコムグループ)などのオンライン旅行代理店が上位を占めてきた。中国本土のゼロコロナ政策という重荷はあるものの、息の長い業績改善が期待される。
(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)
(写真:123RF)
関連記事
-
<一撃!裏銘柄>成長戦略万全のSTIフード――下期収益巻き返しへ
コンビニエンスストア向けなどに水産食品を手掛けるSTIフードホールディングス(2932)は、期を追うごとに利益を伸ばす下地が整っている。 今12月期上期は新商品の投入の遅れや1月の工場火災による機会・・・…続き
-
初値こう読む:10月6日上場 FIXER、本紙予想1750円
FIXER(5129・グロース、情報通信)の初値は公開価格1340円を30.6%上回る1750円(今8月期予想PER26.7倍)と予想する。 マイクロソフトの「Azure」に特化したクラウドインテグ・・・…続き
-
内需に回復余力、小売株をマーク
2022/10/5 17:30
日経平均株価は急反発により2万7000円台を回復したものの、世界景気の先行き不透明感は依然として強い。特に、欧米の金融引き締めの影響が予想される外需に依存する企業は業績の押し下げ圧力が警戒される。・・・…続き
-
きょうのPTS作戦(5日大引け情報)
2022/10/5 17:30
壱番屋(7630)が5日大引け後、今2月期業績(連結)予想の下方修正を発表した。 売上高を従来予想の518億円から472億円(前期比4.8%増)に、営業利益を47億3000万円から30億5000万円・・・…続き
-
株式新聞 10月5日のおすすめ
2022/10/5 17:30
日経平均株価は急反発により2万7000円台を回復したものの、世界景気の先行き不透明感は依然として強い。特に、欧米の金融引き締めの影響が予想される外需に依存する企業は業績の押し下げ圧力が警戒される。(・・・…続き