<新興国eye>協定発効後、初のRCEP閣僚会合―カンボジアにRCEP事務局誘致

新興国

2022/10/7 8:57

 9月17日、カンボジア・シェムリアップにて、協定発効後、初のRCEP(地域的な包括的経済連携)閣僚会合が開催されました。RCEP加盟15カ国(ASEAN10カ国、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド)の担当閣僚が参加しました。カンボジアからはパン・ソラサック商業大臣が、日本からは西村康稔経済産業大臣が参加しました。

 会合では、RCEP協定の運用に関わる諸事項について議論されたほか、西村大臣から、地域における自由で公正な経済秩序の実現に向けて協定の完全な履行の重要性を強調し、協定の内容と非整合的な措置を取らないようにすることの必要性を閣僚間で再確認しました。また、ASEAN諸国によるRCEP協定の履行を確保すべく、日本がまずは20万ドルを拠出し、将来に向けて更に支援を強化していくことを表明しました。

 RCEP協定は、関税の削減などを通じて貿易の自由化を進める協定で2020年11月に15カ国が署名し、2022年1月1日に発効しました。参加国の国内総生産(GDP)と人口の合計は世界の3割を占める規模となります。環太平洋経済連携協定(TPP)に比べると貿易自由化率やルール水準は低いものの、中国が参加する唯一の大型自由貿易協定となります。

 二国間で多数の自由貿易協定が結ばれると、民間の輸出入者からは制度が分かりにくくなり、「スパゲッティボウル」とも呼ばれる多数の協定内容が絡み合った状況になりやすいため、日本はRCEPやCPTPPといった地域的多国間協定を推進してきました。また、物品貿易の関税削減に留まらず、サービス貿易、人の移動、知的財産権、紛争解決等を包括的に定めたRCEPが、アジア地域では主たる協定となると見られます。

 カンボジアについては、政府はRCEPの効果は大きいと期待を示しているものの、RCEPがカンボジアにどの程度の輸出拡大効果をもたらすかは、今後の推移を見守る必要があるものと見られます。なお、今回の会合では、RCEP事務局の早期の設置に期待が示されました。フン・セン首相は、RCEP事務局をカンボジアに誘致したいとしており、今後の協議結果が期待されます。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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提供:モーニングスター社

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