松屋R&D・後藤秀隆社長に聞く:成長トレンドを明確に、エアバッグなど需要好調続く

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2022/11/29 11:40

 松屋アールアンドディ(=松屋R&D、7317)は縫製工程を自動化する独自技術を生かし、縫製自動機の開発・製造・販売のほか、血圧計センサーのカフ(腕帯)、カーシート、エアバッグなどの製造・販売など、幅広い事業を展開している。新型コロナウイルスの影響で一時は苦戦したものの、今3月期は業績好調で、上期決算は大幅な増収増益を達成した。新規事業開発にも積極的で、長期的な成長期待も大きい。同社の現状と将来のビジョンについて後藤秀隆社長に聞いた。

 ――前年同期とは打って変わって、今3月期の上期決算は連結売上高28億7200万円(前年同期比17.4%増)、営業利益2億200万円(同2.3倍)と好調でした。

 「前年同期は主要工場のあるベトナムでコロナ対策規制が発令され、工場の稼働が大きく制限されました。受注は好調だったこともあって、納期対応のため残業代の増加やエア便を使ったことによる運賃なども発生し、それが利益面を圧迫しました。今期は中国のロックダウン(都市封鎖)や半導体不足によるメーカーの生産稼働停止の影響はありましたが、ベトナム工場は安定的な稼働を維持できました。製品面でいえば、エアバッグは新規得意先に対する生産が開始され、カーシートの生産は回復しています」

 ――通期業績予想は据え置きで、売上高61億6600万円(前期比9.3%増)、営業利益4億1000万円(同15.5%増)を見込んでいます。

 「自動機、血圧計カフ、カーシート、エアバッグなどの需要は大きく、下期も好調な推移が続きそうです。中でも、カーシート、エアバッグに関しては、トヨタ自動車(7203)以外のメーカーの受注も予定しています。新型コロナ動向、ウクライナ情勢、米国のインフレなどを不透明材料とみていますが、前期のような厳しい状況にはならないでしょう。前期は新型コロナで足踏みを余儀なくされましたが、今後は改めて成長トレンドを鮮明にしていきたいと思っています。一方、引き続き新規事業を積極展開しており、幾つかの新規事業が本格的にスタートする見込みもあります」

リハビリロボットの認証取得

 ――新規事業はどんな状況にありますか。

 「7月に多目的リハビリテーションロボット『Luna EMG』の医薬品医療機器法における製造及び販売に係る認証を取得しました。リハビリテーションの生産性向上、健康寿命の延伸を目的として、現在、モニター用を設置した1カ所のリハビリ施設において10人程度が週2回使用しています。同ロボットについては、ゲーム感覚で楽しみながら利用できる上、利用前と後で体の動きや歩き方の改善がみられると、高評価を得ています。大学病院、リハビリセンターなどから引き合いがあり、下期には販売を開始できるでしょう。将来的には自社でリハビリセンターの展開も視野に入れています」

 「また、オムロン(6645)と共同で、伸び縮みのある柔らかい素材の縫製を実現するよう、AI(人工知能)画像処理技術を活用した3D(3次元)縫製ロボットの開発を行っています。技術検証として試作機を製造し、今後は複数の特許を申請する予定です。同ロボットは熟練縫製工の高度な縫製作業をロボットで置き換えることが可能となることから、スマートファクトリーの構築とともに、国内への生産回帰も目標としています。さらに、オムロングループのオムロンヘルスケアとは資本・業務提携を強化し、カフの新規開発や製造の品質向上・コストダウンに取り組んでいます」

 ――海外展開について教えてください。

 「ポーランドを拠点に、ルーマニア、チュニジアなどに展開するほか、メキシコ、インドにも進出しています。これまで新型コロナで思うような営業活動ができませんでしたが、現在は人材への投資を行い、対面の営業を積極的に展開し、顧客開拓を進めています。当社の主力である縫製自動機事業は、顧客に購入してもらった自動機を当社工場に設置した上で、製品を製造し顧客に納入するというビジネスモデルです。それをよりグローバルに推進していく局面となってきました」

 「ベトナムでは従来の5工場をすべて集約した新工場を新規に購入した土地に建設します。これまでは土地、建物ともレンタルでしたが、自社工場を保有することで、今後は固定資産の減価償却費や借入の金利を加味しても1億円以上のコスト削減が見込めます。現在、新工場建設は計画通りに進んでおり、来期以降はコスト削減が明確になるでしょう。さらに、現状の第1工場から第5工場も有効活用し、新たな事業展開を図り、さらなる売上、利益の拡大に努めてまいります」

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