海外株式見通し=米国、香港
【米国株】予断許さぬも「三重苦」セクターは逆襲へ

米国株相場に対する投資家の不安感を反映するVIX指数(恐怖指数)について今年1年を振り返ると、年初以降S&P500指数が上昇から反転下落した日の近辺で20ポイントを下回ると、株価指数の上昇圧力が減衰して売り圧力に押される傾向がみられた。そのような中、11月30日にパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が「早ければ12月にも」利上げペースを縮小する可能性に言及したことを好感し、主要株価指数が上昇。その2日後にVIX指数が一時19.0ポイント割れまで低下したものの、14日終値は22.55ポイントとなっている。
VIX指数は8月12日に19.12ポイントまで低下してから反転上昇した際は、9月28日に34.88ポイント、10月12日に34.53ポイントと上昇期間が約2カ月近く続いた。今年1年のようにVIX指数が20ポイント割れ~30ポイント超えのレンジ推移を繰り返すようならば、年末年始の米国株相場は弱含みやすいだろう。
米銀大手JPモルガン・チェース(JPM)のダイモンCEO(最高経営責任者)が6日、「コロナ禍の間に膨らんだ家計の貯蓄がインフレと金利上昇によって浸食されて来年半ばごろには底をつき、個人消費の勢いが弱まるだろう」と述べた。FRBがタカ派からハト派にシフトしたとしても景気減速・後退と企業業績悪化懸念の高まりから、米国株市場にとって来年前半は楽観できない面と思われる。
業績が景気に左右されにくいディフェンシブ銘柄(医薬品・バイオ、ヘルスケア、保険、生鮮食料品など)に物色が集中する可能性もあるだろう。他方、海外売上比率の高い多国籍企業は今年、(1)20年ぶりの米ドル高(2)物流・供給網の混乱に伴う部品不足、および(3)中国のゼロコロナ政策に伴う経済の落ち込みといった「三重苦」に見舞われた。既にこれらの業績下押し要因はそれぞれ改善に向かう兆しも見られ始めていることから、海外売上比率の高い「グローバル景気敏感株」(ボーイングなど)や「グローバル消費関連株」(ナイキなど)も注目すべきセクターとなり得よう。
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【香港株】中国製ワクチン、国境をまたぐ移動への期待
中国政府は7日、国家衛生健康委員会(NHC)が全土で新型コロナウイルス対策を緩和する際に新たなガイドラインを発表したのに伴い、「ゼロコロナ政策」の大幅緩和に踏み切った。新型コロナ感染者が無症状か軽症であれば、国の施設ではなく自宅で隔離できるようになり、ほとんどの公共の場でPCR検査の陰性結果を示す義務もなくなった。
中国当局が9月に緊急使用を承認した康希諾生物(カンシノ・バイオロジクス)製の世界初の吸入型ワクチンは、中国製で主流の不活型ワクチンとの交互接種・追加のブースター接種による注射型と吸入型の併用によって効果を発揮する可能性が高いとされている。また、同社はメッセンジャーRNA型のワクチン開発についても現在フェーズ2の臨床試験中で、上海市で建設中の同ワクチン工場を年末に稼働すると9日に発表している。
同社の最近の業績動向は、22年1~9月決算(中国会計基準)で売上高が前年同期比77%減の7.07億元、純利益が前年同期の13.34億元から4.74億元の赤字へ転落するなど厳しいが、中国政府が本土での外国製新型コロナワクチン承認を拒んでおり、国を挙げて同社への期待が高まっている。
また、香港政府は14日から入境後の行動制限を撤廃すると発表した。中国本土に先駆けて一段の経済再開に乗り出した形。香港の状況次第で来年3月の全国人民代表大会(国会に相当)までに中国政府が国境をまたぐ移動の再開へとかじを切ることも期待される。中国3大航空グループの一角で上海拠点の中国東方航空は、22年1~9月決算(中国会計基準)で売上高が前年同期比32%増の358.50億元、最終損益が前年同期の81.62億元の赤字から281.16億元の赤字へと損失が拡大したものの、今後の業績回復が見込まれる。
(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)
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