株式新聞・相場アンケート――「注目銘柄」トップは三菱UFJ
市場関係者が選んだ2023年の注目銘柄は、三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)が8票を集めてナンバーワンに輝いた。13年から続く日銀の異次元金融緩和がいよいよターニングポイントに差し掛かるとみられ、日本最大の金融グループが人気を集めた格好だ。
常連トヨタなど圏外転落、世界景気の不透明感映す
今回の注目銘柄ランキングは過去数年と顔触れががらりと変わり、上位常連のトヨタ自動車(7203)やソニーグループ(6758)が圏外に追いやられた。インフレを受けて進む欧米の金融引き締めを背景に、世界景気の先行きに漂う暗雲が反映されたようだ。また、日銀の出口戦略への意識が為替の円高見通しを強め、トヨタのようなグローバル企業の前に立ちはだかる。
一方、今回1位となった三菱UFJは、日銀の金融政策の変化で好影響が期待される銘柄の代表格。実際、22年は終盤にパフォーマンスが急改善し、市場にサプライズをもたらした先日の金融政策決定会合における「実質利上げ」後は一段高している。
銀行株にとっての本丸は、16年1月に導入されたマイナス金利からの脱却だ。日銀当座預金の一部に適用されているマイナス金利は、現金を余分に寝かせておかないよう銀行に促し、企業などへの融資を増やす狙い。しかし、低金利の環境下で各行は運用難に苦しんできた。
銀行株のPBR(株価純資産倍率)は1倍を大幅に下回る低評価が定着していただけに、パラダイムシフトが起きた場合の見直し余地は大きい。世界的な金融引き締めの流れは、邦銀にとって利ザヤ拡大のメリットが見込まれる半面、円高も相まって外債損失のデメリットも伴う。それでも、三菱UFJなど大手行はバランスの取れたポートフォリオでリスクを軽減しており、マーケットで評価を高めている。
金融セクターでは同行のほか、三井住友フィナンシャルグループ(8316)と第一生命ホールディングス(8750)も2票を獲得した。
逆張りで東エレク、菱重工は順位上昇
2位は半導体製造装置の東京エレクトロン(8035)で5票を獲得。半導体業界は景況サイクルの谷にあり、逆張りスタンスで選出された形だ。メモリーを中心に市況は軟化している一方、AI(人工知能)やデータセンター、自動車の電動化に欠かせない先端品のニーズは依然として強いという。レーザーテック(6920)も2票で5位にランクインしている。
3位の三菱重工業(7011)は、唯一前回に続いて複数票を得た。また、票数は4と前回の2から倍増している。防衛のテーマに乗るだけではなく、原発や宇宙といった23年に成長が期待される領域でも中核的存在なだけに、必然の結果だろう。高性能のSiC(炭化ケイ素)パワー半導体が注目されるローム(6963)が4位(3票)となった。
「穴株」という認識の主力級
穴株については、回答者にその定義を自由にとらえてもらった。結果、得票トップに浮上したのがソフトバンクグループ(9984)だ。株価は21年序盤をピークに低迷したが、今後のマーケット情勢次第ではテック企業への投資損益が大きく回復する期待もある。トヨタがこのカテゴリーの2位となったのも興味深い。同様に、日本電産(6594)や任天堂(7974)といった「優良企業」についても穴株として扱ったを回答者がいる。
そして、「上値が重いと思われるセクター」は、海運が前回に続いて最多となった。海運大手各社はコンテナ船特需の終えんにより、来期の大幅な減益と減配が予想されている。石油や鉱業などの化石燃料関連の企業も見通しが厳しく、電子機器や半導体がこれに続いた。
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(写真:123RF)
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