市場再編を経てもIPOは変わらず、22年は91社がデビュー
2022年は91社がIPO(新規上場)を果たした。4月に東証が市場再編を行っており、IPOの主戦場は東証マザーズから東証グロースに変わった。例年ならラッシュとなる3月末の上場が再編の影響で少なく、そのため年間のIPO銘柄数も前年の125銘柄から減少している。
22年の傾向は、スタートが早く、3月ではなく再編後の4月に増加した。後半は通常のペースでIPOが行われた。また、ウクライナ問題を受けた延期も目立ったほか、超大型案件がなかったこともあって全体の吸収金額は例年よりも少なく、にもかかわらず初値パフォーマンスは低調だった。
勝ち星「神話」崩壊
前半戦の話題は、第1号案件であるRecovery International(=リカバリー、9214)の公開価格割れ。第1号案件は現行のブックビルディング制度が始まって以降、公開価格割れしなかったが、今年はその「神話」が崩壊した。このため、23年の第1号案件が既に承認を受けている(テクノロジーズ<5248・グロース、情報通信>、1月26日上場予定)が、従来のように手放しで評価する動きは後退しそうだ。
ハイライトはANYCOLOR(=エニカラー、5032)の上場。VTuberグループ「にじさんじ」を運営する企業で、圧倒的な成長力が評価された。市場からの吸収金額は20億円を超える規模だったが、上場初日は買い注文が殺到して売買が成立せず。初値は3倍を超え、22年の3位にランクインした。エニカラーは上場後も東証マザーズ指数の主力銘柄として市場に大きな影響を与えている。このほか、人工ダイヤモンドのイーディーピー(=EDP、7794)、AI(人工知能)を用いたM&A(企業の合併・買収)アドバイザリーのM&A総合研究所(9552)など、上場後にグロース市場のスター銘柄となったIPOも多く上場した。(画像クリックで「IPOの推移」「2022年IPO 初値上昇率ランキング」拡大版にジャンプ)
5倍超え銘柄も登場
後半戦の10月には、プライム市場へのIPO第1号となるソシオネクスト(6526)が上場。半導体不足が深刻化する中、圧倒的な好業績を引っ提げて登場した。そして、今年の初値上昇率1位を獲得したのは11月末に上場したウェルプレイド・ライゼスト(9565)。初値上昇率は5倍を超えた。同社は、eスポーツ関連ビジネス専業で、いわゆる「初物案件」として人気を集めた。ウェルプレを除いては、上場2日目に初値形成を持ち越す人気案件が少なく、また上場2日目になって急失速するケースも多いなど、IPOの初値買いの熱が冷めた印象だった。
年末には、これまで少なった赤字企業の上場が急増。未上場時代に行った増資価格を大幅に下回る価格水準で上場する、ダウンラウンド上場が増加しており、IPOマーケットがさながら、ファンドの投げ売りの場と化してしまった。初値パフォーマンスはそこまで悪くならなかったが、IPOの質的低下が懸念される情勢となっている。
有望ベンチャー待望
23年は、先述のテクノロジーズの上場からスタートする予定。上場観測の報道が出ている有名企業は多いが、金利上昇によってIPOで資金を調達しにくい環境であることから、前半戦は低調となることが予測されている。楽天銀行や延期した住信SBIネット銀行、楽天証券、レオス・キャピタルワークスなどの金融系企業、また月面探索のispace、ドローンなどのA.L.I.Technologiesなど、有望ベンチャー企業の登場も待たれる。
(写真:123RF)
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