セック、宇宙、IoTへ活用の場広がる―櫻井社長に聞く

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2023/1/26 9:00

 セック<3741.T>の中核となる「リアルタイム技術」は、宇宙開発からIoT(モノのインターネット)、MR(複合現実)まで、成長余地の大きい先端分野からの引き合いを強める。同社の櫻井伸太郎社長に今後の展開を聞いた。

<宇宙開発、多くのプロジェクトで実績>

―リアルタイム技術とはどういうものか

「自然現象のように予測困難で再現性のない事象に対応するシステムは、一定のパターンや原則の下で機能する通常のコンピューターソフトでは構築できない。そこで必要となるのがリアルタイム技術だ。未知の事象に対して瞬時に応答して処理できる同技術を核に、宇宙空間などで求められる高い信頼性のソフトをわれわれは開発している。自動運転やロボットの分野にも貢献している」

―1970年の創業から展開している宇宙分野では、アポロ計画以来の有人月面着陸を目指す米国の「アルテミス計画」が始動し、日本も参画している。また、国産ロケットの打ち上げにも官民で注力するなどフロンティアの開拓が本格化しつつある。

「宇宙事業では、人工衛星や探査機のシステムから宇宙天気予報などのデータ解析まで幅広く手掛けている。JAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)の小惑星探査機『はやぶさ』における心臓部の制御システムの開発をはじめ、これまで多くのプロジェクトに携わってきた。無重力環境で動くロボットや月面探査車などにも技術を提供している」

「これまでは受託開発が中心だったが、蓄積した知見を武器に主体的に世界で商談を獲得していく時期に差し掛かったと考えている。例えば、AI(人工知能)によって宇宙機(人工衛星や探査機)の故障を検知する仕組みには、民間企業が興味を示している」

<リアルタイム技術、エッジAIチップに活用>

―リアルタイム技術は宇宙以外の分野でも注目されている

「今3月期上期の売上高は宇宙関連と官公庁向けなどの社会基盤システムがそれぞれ3分の1強を占めたが、ほかにもモバイルネットワーク分野が大きく伸びた。大手通信キャリア向けに、メタバース(巨大仮想空間)に絡んだ開発が売上、受注ともに拡大した。建設や製造業のIT化ニーズも旺盛だ」

―日立製作所<6501.T>などとともに、産学連合でNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の事業に参画している。

「昨年、NEDOの公募事業として、AIを活用した集積回路チップ『エッジAIチップ』(注)の研究開発がスタートした。具体的には、『FPGA』と呼ばれる、柔軟にプログラミングを書き換えられるチップの部分に携わる。ロボットやIoT分野に応用し、日本発の技術として売り出していきたい」

―23年3月期第2四半期末時点の受注残高は30.9億円(前年同期比18.3%増)と高水準だ

「リアルタイム技術への関心が増す中で、変化する需要構造に対応できるよう営業を強化した成果だ。今後も製造業や研究機関など勢いのある市場で受注を積極的に獲得していきたい」

注:エッジAIチップ――人の脳の仕組みを数式化した機械学習アルゴリズムのひとつであるレザバー計算モデルを実行する集積回路チップ。クラウドなどの外部の大規模なデータ処理システムに頼らず、自立して画像や音などのデータを処理する。

(写真:123RF)

提供:モーニングスター社

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