海外株式見通し=米国、香港
【米国株】グロース株精査しチャンスうかがう
FRB(連邦準備制度理事会)の関係者が金融政策に関して踏み込んだ発言をしてはならないルールとされる「ブラックアウト」は、FOMC(連邦公開市場委員会)が開催される前々週の土曜日からFOMC終了時までである。そのブラックアウト入り前日の20日、タカ派として知られ、昨年は積極的な利上げを主張したウォラーFRB理事が次回FOMCで0.25%ポイントの利上げに支持を表明した。
また、ECB(欧州中央銀行)のラガルド総裁は、世界のインフレ圧力を高める要因ではあるものの、中国経済再開でコモディティー(商品)消費が増えるとの認識を示している。とはいえ、足元では市場心理を表す「恐怖指数」と言われるVIX指数が20ポイントを下回り、市場心理が楽観度合いを高めている点は要警戒だろう。
2022年10~12月決算発表の中では、動画配信サービスのネットフリックスが広告付きの月額定額サービスを導入したことも奏功して市場予想を超える会員数増加となった。金融引締め局面が続く中ではバリュー株のグロース株に対する優位が続くと考えられるものの、いち早く大きな下落による調整が進み、かつ、業績立て直しのための有効な経営戦略が実行される場合は投資チャンスだろう。
また、同様に「グロース」というだけで他の銘柄と一緒に大きく売られた銘柄の中には、景気に左右されにくい持続的・安定的な需要があり、キャッシュフローが着実に改善しているものもある。
21年まで米国株をけん引してきた半導体関連銘柄も景気減速の影響を受けて軟調に推移するものが多い中、エネルギー問題の深刻化を背景に電力制御を効率化する「パワー半導体」、IoT(モノのインターネット)センサーの普及により物理世界のさまざまなアナログ情報をデジタル信号に変更する需要が拡大している「アナログ半導体」、そのデジタル情報を通信機器経由でクラウドシステムと送受信する「通信半導体」などは堅調な推移が持続しそうだ。
【香港株】「台湾有事」リスクにおける台湾資本中国企業の存在
連日のように「台湾有事」への警鐘が新聞やメディアで発され、株式投資においても大きなリスク要因に挙げられている。それに関し、無視できないのが台湾資本の中国企業が中国本土の経済に大きな影響を及ぼしている点だ。
それらの企業が引き揚げた場合のデメリットを考慮すると、実際に台湾有事が発生するリスクは世で喧伝(けんでん)されるほど高くはないのかもしれない。そうした点を、主要な台湾資本の中国企業として知られる3社から見てみたい。
世界最大の米菓メーカーにして中華圏最大の食品会社である中国旺旺集団(ワンワン・ホールディングス)は、本土と台湾では「旺旺雪餅」「旺旺仙貝(せんべい)」「旺仔ミルク」「旺仔QQ糖(グミ)」「旺仔小饅頭(卵ボーロ)」などで広く知られる。1月24日終値で時価総額が645億香港ドル(約1兆700億円)に達する。
台湾の頂新国際集団の傘下にある康師傅控股(ティンイー)の康師傅(カンシーフ)は、即席麺(めん)の世界需要の約4割を消費する中国で21年の市場シェアの45.7%(ACニールセン調査)の首位だ。時価総額は24日終値で733億香港ドル。
台湾国内の食品関連・流通企業で最大手の統一企業グループの傘下である統一企業中国控股(ユニ・プレジデント・チャイナ)は、中国本土の果汁飲料、即席麺事業などを展開する。中国市場でのシェアは、即席麺では康師傳に次いで2位、また、飲料市場では首位のコカコーラに次ぐ2位の座を康師傳や中国旺旺集団と争っている。時価総額は330億香港ドルだ。
これらの企業の株価推移を見ると、21年初から香港ハンセン指数が下落基調になる中で相対的に堅調に推移しており、台湾有事は具体的な現実のリスクとはまだみられていないように思われる。
(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)
(写真:123RF)
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