<新興国eye>ブラジル中銀、金利据え置きでもインフレ見通し引き上げ、タカ派にシフト

新興国

2023/2/3 8:47

 ブラジル中央銀行は1日の金融政策決定委員会で、政策金利(セリック)である翌日物金利誘導目標を現行の13.75%に据え置くことを全員一致で決めた。市場の予想通りだった。

 中銀はインフレの急加速を受け、21年3月会合で15年7月以来、5年8カ月ぶりに利上げに転換。22年2月会合まで最大1.50ポイントの大幅利上げを決めたが、翌3月と5月の会合で上げ幅を1.00ポイント、さらに6月と8月の会合では半分の0.50ポイントに縮めている。ただ、これまでの利上げが12会合連続で21年3月以降の利上げ幅も計11.75ポイントに達したことを受け、22年9月会合で現状維持に転換。金利据え置きは4会合連続となった。政策金利は16年12月(13.75%)以来6年2カ月ぶりの高水準となっている。

 中銀は会合後に発表した声明文で、現状維持を決めたことについて、前回12月会合時と同様、「世界経済は依然、不安定で好ましくない状況にある。インフレが引き続き上昇圧力を受け、来年は潜在成長率を下回る見通しで、金融資産のボラティリティが上昇している」とした上で、「先進国を含め、財政のファンダメンタルズに対し、市場はますます敏感になっていることに多くの注意を払う必要がある」とし、これまでの利上げがインフレや景気の先行きに及ぼす影響を慎重に見守りたいとしている。

 また、中銀はインフレ見通しの上ブレ・下ブレリスクについて、「最近のインフレ率の低下傾向にもかかわらず、消費者物価の全体指数とコア指数は物価目標を上回っている」とした上で、「インフレ見通しに対するリスクは上振れと下振れの両リスクがある」としている。中銀の現在の物価目標は23年が3.25%上昇、24-25年は3.00%上昇。

 その上で、今回の会合で、中銀は23-24年の年間インフレ見通しを引き上げた。中銀は声明文で、「23年のインフレ率を5.6%上昇(前回会合時は5%上昇)、24年を3.4%上昇(同3%上昇)と予想している」とし、24年は物価目標を超えるとしている。ただ、政策金利が一定で変わらない場合の別の予測では、23年が5.5%上昇、24年は2.8%上昇と、24年に物価目標を下回るとしている。このため、市場では中銀は政策金利を当面、据え置く可能性が高いと見ている。

 また、中銀は前回会合時と同様、「現在のシナリオには、特に(ルラ新大統領の財政支出拡大による)財政面での不確実性が高く、インフレ期待が物価目標から離れ始めているため、リスクを評価する際には冷静さが必要だ」とし、インフレの先行きの不確実性が高まったとしている。市場では、今回の中銀のインフレ見通しの引き上げはルラ新大統領の社会保障政策が財政支出の急拡大を引き起こし、インフレの上振れリスクとなることを警告したもので、タカ派(インフレ重視の強硬派)スタンスを強めていると見ている。

 今後の金融政策について、中銀は前回会合時と同様、「政策金利を十分に長期間維持する戦略がインフレの収束を確保する上で十分かどうかを検討しながら、引き続き警戒を続ける」とし、当分の間、現状維持を続けたい考えを示した。また、中銀は、「ディスインフレ(物価上昇率の低下)のプロセスが定着し、前回会合時以降、悪化し始めたインフレ期待が物価目標付近で抑制されるまで、現状維持を続ける」としている。

 ただ、中銀は、「将来の金融政策は調整可能であり、ディスインフレプロセスが期待通りに進まない場合、金融引き締め(利上げ)サイクルの再開を躊躇しない」としている。市場ではルラ政権の追加財政支出や最低賃金の引き上げ政策などを考慮した上で、中銀はインフレ期待を抑制するため、現在、高水準となっている金融引き締め的な政策金利をより長期にわたり維持すると予想している。

 次回の金融政策決定会合は3月22日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 ボベスパ<1325.T>、上場MSエマ<1681.T>、上場EM債<1566.T>

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