米SVB破綻、日本株への余波警戒――銘柄選びのポイントは?

 米シリコンバレーバンク(SVB)の経営破綻(はたん)が波紋を呼んでいる。突如浮上した悪材料に、前週末10日のマーケットでは米主要3指数が軒並み値下がり。週明け13日の日本市場でもリスク回避の動きが広がる公算が大きい。ただ、2008年のリーマン・ショックのような事態に発展する可能性は現在のところ指摘されていない。

利上げによる債券損失、預金流出加速で行き詰る

 銀行の破綻時に預金を保護する制度を運営するFDIC(米連邦預金保険公社)は10日、SVBが経営破綻して事業停止に追い込まれたことを公表した。SVBは銀行持株会社のSVBファイナンシャル・グループ(SIVB)の傘下で、スタートアップへの融資を積極的に行っていた。総資産額は昨年末時点で2090億ドル(約28兆円)と、破綻した米銀としてはリーマン・ショック時のワシントン・ミューチュアルに次ぐ2番目の規模だという。

 SVBはFRB(米連邦準備制度理事会)による利上げで運用する債券の損失が膨らみ、資金繰りが悪化。資本増強も難航する中で預金の引き出しが加速し経営が行き詰った。FDICが主導し預金保護に動くものの、1口座当たりの上限は25万ドルとなり、それを上回る額については不透明な状況にある。同行に預金をしているテック系企業が、従業員に給与を支払えなくなるようなケースも想定される。

 10日はNYダウが前日比で345ドル下落し、銀行株は大手のゴールドマン・サックスが4%超値下がりしたほか、カリフォルニア州の銀行持株会社のパックウェスト・バンコープが約38%、商業銀行のシグナチャー・バンクが23%、ファースト・リパブリック・バンクが約15%急落するなど警戒感が広がった。震源のSIVBは、SVBの損失計上と増資計画の発表を受け9日に6割強下落しており、10日は売買停止となった。

 ただ、住宅ローンの不良債権化により資本市場全体が恐慌状態に陥ったリーマン・ショックと比較すると、影響は限定的にとどまるという見方がいまのところ強い。当時の危機は、住宅ローン債権に高レバレッジを効かせた複雑な金融派生商品が地下茎のように張り巡らされ、その収拾が困難になったことが背景にある。一方、今回のSVBの「突然死」は、コロナ後のITバブルにより急増したスタートアップの預金の運用を、利上げの逆風を読み誤った1行が失敗したにすぎない――。楽観的に考えればそうなる。

信用不安の連鎖回避へ、試される金融当局の発信力

 もちろん米債絡みの損失はSVBだけにとどまる話ではなく、今後も各行が損失を計上する方向だ。このため、同様の破綻劇はまだいくらでも内在しており、いずれ表面化することで信用不安を招く恐れは否定できないという意見もある。しかし、SVBは新興系企業を主要な顧客としていた特殊なスタイルであることを念頭に置きたい。保有資産も流動性の低い満期型が多く、すぐに現金化できる債券が少なかったため、ベンチャーバブルの崩壊で運転資金を要した取引先からの預金引き出しに耐えることができなかったという事情がある。これが、個人預金の多い一般的な金融機関との違いであり、1990年代の日本の金融危機のような、景気悪化に伴う不良債権問題とも異なる。

 実際、米国の景気はFRBが頭を悩ますほど底堅く、SVB破綻がクローズアップされる前のマーケットの最大の懸念材料は、利上げの長期化だったはずだ。また、金融システムもリーマン・ショックの教訓で強化されているため、極端に状況を悲観することは妥当とは言えないだろう。問題は、一度過敏になってしまった市場は悪材料にしばらく反応しやすくなるという点だ。そのため、不安の連鎖の回避へ向けたFRBの手腕が一段と重要になる。

 日経平均株価の10日終値2万8143円に対し、同日のCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)日経平均先物は2万7510円(前日比490円安)となった。3月末の配当落ち影響(約250円)を考慮した日経平均の見込み値は2万7700円台半ばとなる。このため、13日は売り先行となる可能性が濃厚だ。銀行株や、投資事業が主力のソフトバンクグループ(9984)へのマイナスインパクトは特に大きくなるかもしれない。ただ、来期の業績拡大期待が大きい銘柄に関しては、過剰反応により下値買い妙味が強まるものもありそうだ。

 銘柄選びのポイントの1つは、こうした状況の中でも業績の先行きを見通しやすいか(もちろん良い方向に)というところだ。SVBや、そこに口座があるベンチャー企業との直接的な関係の有無にかかわらず、少しでも影響が及びそうな銘柄の株価はひとまず値崩れする危険がある。上述の銀行株などはその代表格と言えるだろう。また、需給面でも注意が必要になる。テック系、ヘルスケアセクターのグロース(成長)株には目先、容易には資金が入りにくくなるかもしれない。機関投資家の動向に左右されやすい主力大型株も、特に利益確定余地の大きいものは現金化の売り圧力に押される可能性がある。

TKPなど注目、バリュー株は日本製鉄が指標 穴株のバンクイノベ

 以上の点を踏まえた参考銘柄。貸会議室のティーケーピー(=TKP、3479)は、コロナ後のリオープン(経済活動再開)による来2月期の利益回復確度が高い。株価水準はコロナ後の高値圏にあるものの、本決算発表時の4月には意欲的な中期経営計画が打ち出されることも期待される。リオープン(経済活動再開)関連では、百貨店の三越伊勢丹ホールディングス(3099)あたりも押し目買い・突っ込み買いの狙い目となる。

 また、SVB破綻は、FRBの引き締め減速の思惑を呼び、為替が円高方向にフレつつある。よって、内需の円高メリット株の中にも浮上をうかがう銘柄が現れそうだ。自転車専門店のあさひ(3333)は海外生産のPB(=プライベートブランド、自主企画)商品を輸入する際に円高が有利に働く。原材料高に対する値上げ効果も引き続き期待され、業況の季節性を加味しても春の新生活需要が活性化する時期に当たる。「業務スーパー」の神戸物産(3038)や、急騰の反動の一巡を待ってからのゴールドウイン(8111)もマークしたい。

 バリュー(割安)株の鉄鋼などは、根強い買い人気を維持できるかが注目され、柱の日本製鉄(5401)は地力が試される。同銘柄が粘り腰を示せれば周辺銘柄も活気づく。電炉の東京鉄鋼(5445)や、戦略製品のCFCC(炭素繊維複合ケーブル)のポテンシャルが大きい東京製綱(5981)などが有力だ。

 このほか、個人投資家の動き次第で全体相場とはカイ離した活躍を見せる銘柄も出てくるだろう。スマートパチスロ関連最右翼で、青天井の足どりのゲームカード・ジョイコホールディングス(=GCジョイコ、6249)や、穴株としては、WBC(ワールドベースボールクラシック)テレビ放送での「メメントモリ」のCMが話題のバンク・オブ・イノベーション(=バンクイノベ、4393)も面白そうだ。

(写真:123RF)

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