ECB、0.5ポイントの大幅利上げ―利上げ継続のフォワードガイダンスを削除
2023/3/17 9:10
<チェック・ポイント>
●金融システム不安よりもインフレ対策を優先
●金融システム不安については「ユーロ圏の銀行セクターは強じん性がある」と
●金利の方向性は「現時点で判断できない」との認識示す
ECB(欧州中央銀行)は16日の定例理事会で、主要政策金利のうち、市場介入金利である定例買いオペの最低応札金利(リファイナンス金利)を0.50ポイント引き上げ、3.50%とすることを全員一致で決めた。3.50%は08年11月以来14年3カ月ぶりの水準となる。
ECBは他の2つの政策金利も同率引き上げ、下限の中銀預金金利は3%、上限の限界貸出金利も3.75%とすることを決めた。新金利は17日から適用される。
利上げは予想通りだったが、米銀の相次ぐ経営破たんやスイス金融大手クレディ・スイスの流動性不足で金融システム不安が高まるなかで利上げ幅は0.25ポイントにとどまるとみられていただけに、0.50ポイントの大幅利上げはサプライズとなった。
市場ではクレディ・スイスの流動性不足は同行だけの問題として今回の大幅利上げを支持する見方もあるが、11年の欧州政府債務危機の震源地となった南欧諸国に対する債権が大きいユーロ圏銀行への信用不安が高まったとき以来の失策になると警告する見方もある。
ECBは最近の金融不安の高まりについて、「現在の金融市場の緊張を注視しており、ユーロ圏の物価と金融の安定を維持するために必要に応じて対応する用意がある」とした上で、ユーロ圏の銀行セクターは資本と流動性のポジションが強固で、強じん性があるとの見方を示し、金融不安の懸念よりもインフレ懸念を優先し、前回会合時で示した通り、0.5ポイントの大幅利上げを決めたとしている。
また、今後についても、経済や金融に関する指標、コアインフレ率の動向、金融政策の伝達の強さに照らして、インフレ見通しに基づき、政策金利を決定するとしている。
一方で、ECBは今後の金融政策の見通しについて、「政策金利は引き続き安定したペースで大幅に引き上げなければならない」、さらには、「今後もさらに金利を引き上げる」などとするフォワードガイダンス(金融政策の指針)を削除した。
会合後の会見で金融政策のフォワードガイダンスを示さなかったことについて記者団から問われたECBのラガルド総裁は「(金利の将来の方向性を)現時点で判断することはできない」と述べたが、金融システム不安で急上昇した金利が落ち着いていることを指摘し、金融不安は一過性との見方を示した。市場ではECBがフォワードガイダンスを削除したことについて、ハト派的な利上げと見る向きもある。
ECBが今回の会合で示したインフレ率の見通しは、全体指数を23年に5.3%上昇、24年に2.9%上昇、25年に2.1%上昇と予想したが、しばらくは高い水準で推移するとみおり、「インフレ率を2%上昇の中期目標にタイムリーに戻すという決意を持っている」とし、インフレと戦う必要性を強調した。コア指数の見通しについては23年に4.6%上昇と、22年12月の前回予測時点から高めに引き上げた。ただ、その後は金融引き締め効果により、24年は2.5%上昇、25年は2.2%上昇に減速すると予想している。
次回の会合は5月4日に開かれる予定。
提供:ウエルスアドバイザー社
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