<新興国eye>ロシア中銀、予想通り金利据え置き―インフレリスクを強調、再利上げに含み
2023/3/20 9:09
ロシア中央銀行は先週末(17日)の金融政策理事会で、インフレ加速リスクを警戒する中、主要政策金利である資金供給のための1週間物入札レポ金利と資金吸収のための1週間物入札預金金利を7.50%に据え置くことを決めた。市場の予想通りだった。
中銀はロシア・ウクライナ戦争の勃発(22年2月24日)と、それに伴う西側の対ロ経済制裁により、インフレ圧力が一段と高まったことや、ルーブルが一時30%も急落したことを受け、22年2月28日の臨時会合で、主要政策金利を9.50%から一気に20.0%に引き上げた。しかし、同4月の臨時会合から景気を支援するため、利下げサイクルに転換。利下げ幅が計12.50ポイントに達し、ウクライナ戦争開始後の緊急利下げ分(10.50ポイント)を大きく上回ったことを受け、同10月会合から金利据え置きに転換した。現状維持はこれで4会合連続。金利水準は21年12月(7.50%)以来の低水準となっている。
中銀は会合後に発表した声明文で、金利を据え置いたことについて、「現在の物価上昇率はインフレのコア指数を示すコンポーネントを含め、緩やかなままだ。家計部門のインフレ期待は依然高いが、3月にかなり低下した。企業部門も同様だ」とし、インフレ懸念が緩和したことを指摘している。2月のインフレ率は前年比11.0%上昇と、1月の同11.8%上昇から伸びが大きく鈍化した。値動きが激しい生鮮食品などの要素が低下したことが背景。
中銀は前回2月会合で、「中期的なインフレ見通しに対するリスクバランスは、依然、インフレ上振れリスクだ」とし、「インフレ加速リスクが強まれば、中銀は次回3月17日会合で主要な政策金利の引き上げの必要性について検討する」としていたが、中銀は今回の会合でも、「インフレ見通しに対するリスクバランスは、依然、上振れリスク」とし、「インフレ加速リスクが強まれば、中銀は今後の会合で主要な政策金利の引き上げの必要性について検討する」との文言を残し、利上げ再開の可能性に含みを残している。市場では中銀は前回の会合からタカ派(インフレ重視の強硬派)に転換したと見ている。
今後のインフレ見通しについて、中銀は、「今後数カ月でインフレ率は(前年同月のインフレ率が高かったため低めの数値が出る)いわゆるベース効果で前年比4%上昇を下回る」とした上で、「金融政策スタンスを考慮すると、インフレ率は23年に5ー7%上昇となり、24年には物価目標の4%上昇に戻る」と予想している。
ただ、中銀はインフレ加速要因について、前回会合時と同様、「(西側による)貿易・金融制裁の強化がロシアの輸出品に対する需要を弱め、為替相場の変動(通貨ルーブル安)を通じ、インフレを加速させる可能性がある」とし、ウクライナ戦争をめぐる西側の経済制裁の強化がインフレ上振れリスクと指摘。また、「財政赤字が想定よりもさらに拡大した場合、インフレ上振れリスクが高まる」とし、その上で、「24年にインフレ率を物価目標(4%上昇)に戻し、その後、4%上昇近くで維持するには金融政策の引き締めが必要になる可能性がある」と警告している。
さらに、中銀は前回会合時と同様、労働市場のひっ迫も依然、インフレリスクと指摘。ウクライナ戦争の拡大に伴う30万人の兵士動員や国外脱出の増加により、労働者不足に陥っているためだ。中銀は、「一部のセクターでは労働力が不足しており、実質賃金の伸びが労働生産性の伸びを上回る可能性がある。(このため)労働市場によるインフレ上振れリスクが続いている」と警戒している。
市場では今年の財政政策が中銀の金融政策を決め、財政支出の拡大が続けば、これまでの金融緩和スタンスを変更する可能性があると見ている。一部では4-6月期に利上げに転換すると予想する一方で、反対に政策金利が据え置かれ、今後数カ月で利下げに転換すると予想、見方が分かれている。
次回の定例会合は4月28日に開かれる予定。
<関連銘柄>
RTS連動<1324.T>、WTI原油<1671.T>、ガス<1689.T>、
提供:ウエルスアドバイザー社
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