<新興国eye>ブラジル中銀、予想通り金利据え置き―据え置き継続へ

新興国

2023/3/23 8:53

 ブラジル中央銀行は22日の金融政策決定委員会で、政策金利(セリック)である翌日物金利誘導目標を現行の13.75%に据え置くことを全員一致で決めた。市場の予想通りだった。

 中銀はインフレの急加速を受け、21年3月会合で15年7月以来、5年8カ月ぶりに利上げに転換。22年2月会合まで最大1.50ポイントの大幅利上げを決めたが、翌3月と5月の会合で上げ幅を1.00ポイント、さらに6月と8月の会合では半分の0.50ポイントに縮めている。ただ、これまでの利上げが12会合連続で21年3月以降の利上げ幅も計11.75ポイントに達したことを受け、22年9月会合で現状維持に転換。金利据え置きは5会合連続となった。政策金利は16年12月(13.75%)以来6年2カ月ぶりの高水準となっている。

 中銀は会合後に発表した声明文で、現状維持を決めたことについて、「世界経済は依然、不安定で好ましくない状況にある。欧米で起きた銀行の信用危機が金融市場の急変動や先行きの不透明を引き起こしており、注視する必要がある」とし、最近の欧米の信用不安に警戒感を示す一方で、「国内のインフレは全体指数もコア指数のいずれも物価目標を上回っている」と、インフレ懸念を強調した上で、これまでの利上げがインフレや景気の先行きに及ぼす影響を慎重に見守る考えを示した。

 また、中銀はインフレ見通しの上振れ・下振れリスクについて、前回2月会合時と同様、「インフレ見通しに対するリスクは上振れと下振れの両リスクがある」とし、その上で、今回の会合で、中銀は23-24年の年間インフレ見通しを引き上げた。中銀は声明文で、「23年のインフレ率を5.8%上昇(前回会合時は5.6%上昇)、24年を3.6%上昇(同3.4%上昇)と予想している」とし、24年も物価目標を超えるとしている。中銀の現在の物価目標は23年が3.25%上昇、24-25年は3.00%上昇。

 ただ、政策金利が一定で変わらない場合の別の予測では、23年が5.7%上昇(同5.5%上昇)、24年は3.0%上昇(同2.8%上昇)と、24年のインフレ率は物価目標に収束すると予想している。このため、市場では中銀は6年ぶりの高水準にある政策金利を当面、据え置くと見ている。

 今後の金融政策について、中銀は前回会合時と同様、「政策金利を十分に長期間維持する戦略がインフレの収束を確保する上で十分かどうかを検討しながら、引き続き警戒を続ける」とし、当分の間、現状維持を続けたい考えを示した。また、中銀は、「ディスインフレ(物価上昇率の低下)のプロセスが定着し、前回会合時以降、悪化し始めたインフレ期待が物価目標付近で抑制されるまで、現状維持を続ける」としている。

 ただ、中銀は、「将来の金融政策は調整可能であり、ディスインフレプロセスが期待通りに進まない場合、金融引き締め(利上げ)サイクルの再開を躊躇しない」としている。それにもかかわらず、市場では現在、高水準となっている金融引き締め的な政策金利を当面維持しても、6月には利下げに転換すると予想している。最近の欧米の銀行危機による経済への悪影響や、ルラ政権が6年ぶりの高水準にある中銀の政策金利を引き下げるよう中銀に要請していることが背景。

 次回の金融政策決定会合は5月3日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 ボベスパ<1325.T>、上場MSエマ<1681.T>、上場EM債<1566.T>

提供:ウエルスアドバイザー社

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