<新興国eye>タイ中銀、予想通り0.25ポイント引き上げ―小幅利上げ継続を示唆

新興国

2023/3/30 9:15

 タイ中央銀行は29日の金融政策委員会で、世界的な銀行危機の懸念が強まる中、政策金利である翌日物レポ金利を0.25ポイント引き上げ、1.75%とすることを全員一致で決めた。市場の大方の予想通りだった。一部では現状維持を予想していた。

 中銀は20年6月から22年6月まで16会合連続で政策金利を据え置いたが、通貨バーツ安とインフレ上振れリスクが強まったとして、翌8月会合で18年12月以来、3年8カ月ぶりに利上げ(0.25ポイント)に転換している。これで利上げは5会合連続となり、利上げ幅は計1.25ポイントに達した。

 中銀は会合後に発表した声明文で、追加利上げを決めた理由について、前回1月会合時と同様、「タイ経済とインフレの見通しを踏まえると、段階的な金融政策の正常化(小幅利上げ)の継続が適切であると判断した」としている。

 また、中銀は、「長引くインフレ圧力と(欧米)先進国での銀行危機などにより、世界経済の不確実性が高まっている」と、景気懸念を示す一方で、「全体指数のインフレ率は年央に物価目標の範囲に戻る可能性が高いが、コスト上昇の価格転嫁や(景気回復に伴う)需要拡大によるインフレ上振れリスクで、コアインフレ率は依然上昇している」とし、景気よりもインフレ懸念を最優先する考えを示している。

 景気の見通しについて、中銀は最新の3月経済予測を公表、23年のGDP伸び率を3.6%増(前回11月予測は3.7%増)、24年を3.8%増(同3.9%増)と、いずれも前回予測をやや下方修正したが、22年の2.6%増を上回り、安定した成長軌道を予測している。中銀は声明文で、「タイ経済は観光や個人消費を中心に拡大基調が続く。輸出は回復しており、今年下期には力強さを増す」とし、景気回復に伴うインフレリスクを指摘している。

 インフレ見通しについては、中銀は3月経済予測で、全体指数は23年を2.9%上昇、24年を2.4%上昇と予想、「23年半ばまでに物価目標に戻る可能性が高い」としている。コア指数は23年を2.4%上昇、24年を2.0%上昇と、伸びが減速に向かうと予想している。ただ、中銀は、「インフレ率の見通しはコスト上昇により価格転嫁が進む可能性があり、景気回復が勢いを増すにつれ、需要圧力が強まる可能性がある。持続的な高インフレは依然としてリスクだ」とし、警戒感を緩めていない。

 また、最近の世界的な銀行危機について、中銀は、「タイの金融システムは依然、強靭性がある。一部の先進国での最近の銀行危機はタイの金融システムに重大な影響を与えていない」としている。ただ、「状況は流動的で不確実なため、今後の動向を注視し、タイの金融の安定性に対する潜在的な影響を継続的に見ていく必要がある」としている。

 バーツ相場については、中銀は、「FRB(米連邦準備制度理事会)の不確実な金融政策の見通しや、先進国の銀行危機によって引き起こされた金融市場のボラティリティ(変動)により、バーツはドルに対して安定していない。金融市場の動向と為替相場を含む国内金融市場への影響を注視していく」としている。

 今後の金融政策について、中銀は、「需要圧力に起因するインフレ上昇リスクがあるものの、景気回復は大筋で順調に進んでいる」としたが、「経済成長とインフレの見通しが現在の評価から変化した場合、金融政策の正常化(利上げ)のタイミングと規模を調整する用意がある」とし、小幅利上げの継続の可能性に含みを持たせた。ただ、前回会合時で使われた「政策金利は長期的に持続可能な成長と一致する水準まで徐々にゆっくりと(“measured”)正常化されるべき」との文言を削除、ややトーンダウンした。市場では中銀はインフレリスクがあるため、今後も徐々に小幅な利上げを継続、次回5月会合で0.25ポイントの利上げを実施するが、その後は利上げを停止すると見ている。

 次回会合は5月31日に開催される予定。

<関連銘柄>

タイSET<1559.T>、iS新興国<1362.T>、アジア債券<1349.T>、上場EM債<1566.T>、上場MSエマ<1681.T>、アセアン50<2043.T>

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