永濱利廣のエコノミックウォッチャー(36)=景気予測調査から占う今期業績見通し

コラム

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2023/4/3 17:25

 

 3月に公表された2023年1~3月期法人企業景気予測調査は、今2024年3月期の業種別企業業績を見通す先行指標として注目される。今年4月下旬から本格化する前23年3月期決算発表を前に、好調が見込まれるセクターを予想してみたい。

「増収減益」の計画優勢か

 法人企業景気予測調査は、2月下旬にかけて資本金1000万円以上の企業に対して行ったもの。売上高を見ると、今期は3期連続の増収計画となっている。一方で、経常利益は前期比1.2%マイナスとなる方向だ。コスト負担増を反映したとみられる。このことから、今後打ち出される上場企業の今期業績見通しにおいても、減益を視野に入れるケースが目立ちそうだ。

 しかし、非製造業を中心に強めの計画を掲げる企業も想定され、そうした業種には注目が集まる公算。法人企業景気予測調査では、「木材・木製品」「石油・石炭」「非鉄金属」「鉱、採石、砂利採取」「電気・ガス・水道」以外の全業種で今期は増収の計画となっている。中でも増収率が高いのは「宿泊・飲食サービス」「生活関連サービス」「自動車・同付属品」「はん用機械器具」「その他の輸送用機械」で、いずれも2ケタ増収となっている。

 なお、生活関連サービスは、消費者の生活に密着したクリーニング業や理容業、美容業、銭湯、スーパー銭湯、エステティック業、リラクゼーション業、ネイルサービス業、旅行業、結婚相談業、家事サービス業、冠婚葬祭業などで構成される。また、はん用機械器具とは、ポンプ・圧縮機械、ボイラ・原動機、一般産業用機械・装置などの製造業に相当する。

リオープン追い風の宿泊・飲食サービスなど

 生活関連サービスや宿泊・飲食サービスについては、今期は新型コロナウイルスの感染症法上の取り扱いの見直しや、インバウンド(訪日外国人観光客)消費の拡大といった、経済活動の正常化が織り込まれた可能性が推察される。また、自動車・同付属品やその他の輸送用機械、はん用機械器具については、コスト増に伴う価格転嫁の影響が大きいとみられるが、半導体などの部品不足の緩和により、ペントアップ(繰り越し)の需要回復も見込んでいることがうかがえる。

 経常利益に関しては、法人企業景気予測調査では多くの業種で減益計画となっている。ただ、こうした中、高い増益率を掲げているのが電気・ガス・水道と石油・石炭製品、生活関連サービス、宿泊・飲食サービスなどだ。特に、宿泊・飲食サービス、生活関連サービスについては、売上高と同様に新型コロナ収束によるリオープン(経済活動再開)が追い風になる。

 また、前期は赤字見込みの電気・ガス・水道、石油・石炭製品も2割以上の増益計画となっている。いずれも化石燃料などの原材料コストが下がっていることに加えて、電気・ガス・水道では、各社が政府に申請している電気料金の引き上げや、一部の原発再稼働の効果が寄与している可能性がある。さらに、これ以外にも、「職業紹介、労働者派遣」や「繊維」も2ケタ増益を見通している。

 なお、日銀の3月短観の業種別収益計画(大企業)は、法人企業景気予測調査に比べて聞き取りのタイミングが若干遅く、こちらも今期の業績見通しを読み解く手掛かりとして注目したい。

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