海外株式見通し=米国、香港
【米国株】ハイテクの戻り上昇一服か

米地銀の預金減少に歯止めが掛かり始めた。FRB(米連邦準備制度理事会)が3月末に発表したデータでは、同月22日までの1週間の米銀の預金残高は、小規模銀行が前週比50億ドル増の5兆3860億ドルとなった。流動性供給によって、一時拡大していたFRBの総資産(バランスシート)額は、足元で減少に転じた。
パウエルFRB議長が3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で述べた通り、FRBのバランスシート拡大が一時的ならば、大型ハイテク株の戻り上昇力が鈍化してくる可能性があるだろう。テクニカル指標のRSI(相対力指数)を見ても、ナスダック100指数は31日に68.48%と「買われ過ぎ」とされる要警戒ゾーンの70%が近づいた。
昨年の20年ぶりのドル高水準や、中国のゼロコロナ政策が業績の重しとなってきた景気敏感・消費関連株多国籍企業の代表格の1つにスポーツアパレル大手ナイキ(NKE)がある。同社が3月21日に発表した昨年12月~今年2月の決算は、ドル高が増収率を引き続き抑制したほか、香港・台湾などを含む「大中華圏」の減収率も改善には至っていない。
中国の3月製造業購買担当者指数(PMI)は国家統計局と財新/S&Pグローバルともに2月から低下しており、中国からの追い風はもう少し先になりそうだ。
また、NYダウ採用銘柄の年間騰落率で2021年が最下位のマイナス15%、昨年も28位のマイナス44%と不振が続いたウォルト・ディズニーは、アクティビスト(物言う株主)から経営陣への突き上げも厳しさを増している。クラウド・サービスのセールス・フォースはアクティビストが成長と利益率改善の両立へ貢献して株価も反転上昇した。ディズニーも同様の動きが期待される中で、逆張り投資の観点から注目される。
【香港株】アリババの6事業分割とIPO期待
アリババは3月28日に、市場競争力と企業価値向上のため同社を6事業グループに分割し、各事業が独立した経営を行う新組織体制に再編すると発表した。
6事業とは、「中国(Taobao Tmall)コマース事業」「グローバル・コマース事業」「中国ローカルサービス事業」、物流に係る「ツァイニャオ・ネットワーク事業」「クラウド事業」「デジタルメディアおよびエンターテインメント事業」であり、中国コマース事業だけ例外的にアリババの完全子会社となるものの、6事業グループにはそれぞれCEO(最高経営責任者)が着任して取締役会が設立される。それぞれ資本調達やIPO(新規上場)を目指すための柔軟性を有するとされている。
昨年10~12月の決算は、全体では売上高が前年同期比2.1%増の2477億元、非GAAPの調整後純利益が同11.9%増の499億元となり、調整後EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)マージンは同3ポイント上昇した。
主力の中国コマース事業は、売上高が前年同期比1%減の1699億元、調整後EBITDAが同1%増の586億元だった。その他の事業で調整後EBITDAが黒字なのは、アリババ・クラウドなどのクラウド事業だけで、他の4事業は赤字である。その中で物流子会社が担うツァイニャオ・ネットワーク事業は、香港市場へのIPO準備を開始したと報じられた。
同事業は6部門の中で最も増収率が高く、同27%増収だった。また、調整後EBITDAも前年同期の9200万元の赤字から1200万元の赤字へと損失幅が縮小しており、黒字化が視野に入っている。
株価は足元で20年10月の過去最高値から約7割下落し、予想PERが12倍台、PBR(株価純資産倍率)が1.8倍の水準にある。事業分割により中国政府からの規制圧力が緩和する期待に加え、「コングロマリット・ディスカウント」の解消によるグループ企業価値顕在化も意識される。
※右の画像クリックでグラフ拡大
(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)
(写真:123RF)
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