エージーピーは中計目標視野に一段高指向――リオープンで業績回復、空港外領域の伸び代大きく

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2023/4/18 8:50

 エージーピー(9377)の業績が、リオープン(経済活動再開)の波に乗り順調に回復している。水際対策の緩和や「全国旅行支援」の延長も追い風に、今2024年3月期にかけても主力事業の航空機への電力供給サービスの収益改善が進む公算。また、活躍の場を空港外に広げる取り組みも注目され、株価は中期経営計画(26年3月期まで)を見据えた割安感が意識される。

動力供給事業は需要持ち直す、価格転嫁焦点

 同社は駐機中の航空機に「GPU(地上動力設備)」と呼ばれる装置で電力や冷暖房を送り込むサービスの最大手。コロナ禍が直撃した21年3月期には上場来で初の赤字(連結営業損益は1.3億円の損失)を余儀なくされた。しかし、最悪期を脱した後はすぐさま黒字に浮上し、前期は営業利益4.1億円(前々期比3.4倍、1月27日に2.5億円から上方修正)を見込む。

 航空業界のリオープンにより国内線の運航便数が回復し、動力供給事業が増収基調にある。空港内での整備保守や施設保守といったエンジニアリング事業も上向きつつあるほか、利益面では各種コストの抑制が奏功。前期第3四半期累計の営業利益は1.8億円(前年同期はほぼトントン)だった。

 世界的に新型コロナウイルス感染が収束する中で、日本も昨秋に海外からの1日当たりの入国者数の上限をなくし、さらに、政府は観光振興の全国旅行支援を継続するなど、航空業界やエージーピーにとって先行きの好材料が豊富な状況だ。

 一方で、リオープンの副作用として生じた電気料金の高騰に対応していく必要がある。電力費用の増加は動力供給事業の収益性を圧迫するため、同社は顧客との間で上昇分を価格に転嫁する方向で顧客とおおむね合意を得ており、今期はその成果が期待される。

EC市場取り込む、物流保守サービス事業売上18億円へ

 IATA(国際航空運送協会)では、23年に世界の航空旅客がコロナ前の水準を回復すると予想する。アセアン(東南アジア諸国連合)地域の回復は3割程度が見込まれる。ただ、コロナ禍を通じて業界が抱えるリスクが浮き彫りになったこともあり、エージーピーはこれまで以上に空港以外での展開を拡大していく姿勢を強めている。

 その1つが、物流保守サービス事業におけるEC(=Eコマース、電子商取引)市場だ。空港での業務で培ったノウハウを応用し、物流センター向けの案件獲得に成功している。同事業の売上高については、26年3月期に18億円(今期見込みは5億円)を目指す。

 中計最終年度の連結業績の目標は、売上高150億円・営業利益率10%(営業利益15億円)以上で、ROE(自己資本利益率)も10%を視野に入れる。航空業界が取り組む環境負荷低減の動きも、CO2(二酸化炭素)の排出量を抑制できるGPUを手掛ける同社には有利に働きそうだ。

 株価は直近の好決算を手掛かりに800円台まで水準を切り上げている。ただ、利益の回復段階がまだ序盤に位置することを踏まえると、前期予想EPS(1株利益=39.38円)に基づくPER20倍程度の時価には割安感が見いだせる。今期以降の利益の上積みが意識されるほか、中計期間中は総還元性向100%以上を掲げることからも投資妙味が大きい。

(写真:123RF)

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