海外株式見通し=米国、香港
【米国株】銀行セクター内で明暗、大手堅調

大手商業3行の2023年1~3月の決算では、預貸の利ザヤに当たる純金利収入の堅調な推移が確認された。JPモルガン・チェースが前年同期比49%増、シティグループが同23%増、ウエルズ・ファーゴが同45%増となった。FRB(米連邦準備制度理事会)の金融引締めによる融資金利上昇や、シリコンバレー銀行の破たんに伴う金融システム不安から、地銀・中小銀行の顧客が保険対象外預金を大手銀行に移行させる動きの恩恵を受けた格好だ。
S&P500構成銘柄のうち金融商品を開発・提供する企業株式全体の動向を表す「ファイナンシャル・セレクト・セクター(トータルリターン)指数」の終値は、3月17日の2990ポイントを底に反発し、4月14日終値まで6.76%上昇した。
同指数の14日間RSI(14日間の終値前日比での上げ幅合計を、上げ幅と下げ幅の全合計数値で割った比率)は、3月13日の17.79から4月14日に54.57まで上昇した。RSIは一般に30%以下が「売られ過ぎ」、70%以上が「買われ過ぎ」とされる。
さらに、3月下旬には同指数のRSIが上昇する中で終値が下落・横ばいで推移する「逆行現象(ダイバージェンス)」が見られた。これはテクニカル分析上の買いの好機とされており、今回も有効に機能した可能性があるだろう。
同指数の日次変動率の3倍(費用控除前)に連動する投資成果を目指すETF(上場投資信託)である「ディレクション・デイリー金融3Xシェアーズ(FAS)」の終値は、4月14日に3月17日比で19.5%上昇した。他方、米国の主要な地方銀行株で構成される「米S&P地方銀行セレクト・インダストリー・トータルリターン指数」終値は、4月14日に3月17日の水準を下回るなど明暗が分かれた。相場が大きく変動する際には、このようなテクニカル指標に基づいた投資が有効になりやすい面もある。
【香港株】香港取引所は大手企業事業分割と「デュアル・プライマリー」上場で注目
中国ネット通販大手2強のアリババとJDドットコムの分離上場計画が相次いで報道された。アリババは3月28日、持株会社への移行と6つの事業グループへの分割・再編を発表し、各事業会社のIPO(新規上場)も視野に入れるとした。このようなIPOが相次げば香港取引所の収益にはプラスに働くことが期待される。
香港市場のIPO件数およびIPOによる資金調達額の四半期ごと推移では、22年4~6月を底として特に資金調達額が回復基調にある。7~9月以降、主にIT・ハイテクなど「ニューエコノミー」やバイオ企業のIPOが増加した。
昨年7月にはアリババが22年末までに手続き完了を目指して香港市場に「プライマリー上場」を申請すると発表。ニューヨーク証券取引所との重複上場による「デュアル・プライマリー上場」を目指すとしていた。
同社は19年に香港で条件の緩い「セカンダリー上場」をしていたが、セカンダリー上場では中国本土の投資家が上海や深センの取引所を通じて香港株を売買できるストックコネクト(株式相互取引)の対象には入らない。なお、セカンダリー上場とは、既に上場している海外市場の規則を優先し、香港市場の規則を一部免除する扱いだ。
香港市場にセカンダリー上場する中国系企業に対してデュアル・プライマリー上場が承認され、ストックコネクトを通じて中国本土から取引できるようになれば、香港市場の活性化につながるとみられる。中国政府の経済対策として、この方式での上場承認要件の緩和が盛り込まれる可能性も考えられる。
※右の画像クリックでグラフ拡大
(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)
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